2.
前の問題と同じく、aからdまでの文章から2つ選ぶ問題ですね。同じように、a or bとc or dの問題ですね。
この問題の主点は、自然失業率です。さて、自然失業率とはなんでしょうか?自然失業とは、賃金が安くて働いてられるかとか、なんらかの雇用側との摩擦や、技術的な問題などにより働く意思があるにも関わらず、失業している人で、その失業率とはその割合です。
その仮説とは、なんのことを言っているのでしょうか?これもまた古典派の考え方の話で、物価上昇率によって、失業率は影響されませんよって仮説です。これは、前の問題でも、古典派の考え方として、少し触れたと思います。
そして、合わせて覚えておきたいのが、フィリップ曲線です。フィリップ曲線は、賃金上昇率と、失業率を表したグラフになります。イギリスの100年分のデータから割り出した分析結果がもとになっています。
見て分かるように、賃金が高ければ高いほど失業率は下がっていきます。景気が良い場合、どんどん名目賃金は上がり、とうぜん失業率も下がっていきます。賃金の上昇率が0の点は、いわば均衡がとれた状態であり、完全雇用の状態と言えます。しかしそれよりも下がっていくと、当然不景気の状態になり、失業率も大きくなっていきます。
が、このフィリップ曲線、測定の場所や時期により非常に不安定であるということが、その後分かってきます。特に古典派の潮流をくむ人は、この結果は短期的なものであって、長期的には、すべて完全雇用に向かい、垂直になっていくと主張しました。
つまり長期的には、物価上昇率によって、失業率に長期的には変化はありませんよって言ったわけです。これが、自然失業率仮説です。
a 自然失業率は、現実のインフレ率と期待インフレ率が等しいときの失業率である。
b 現実の失業率が自然失業率よりも高いとき、現実のインフレ率は期待インフレ率よりも高くなる。
現実のインフレ率と期待インフレ率とはいったいどういうことでしょうか。あまり難しく考えることなく、期待インフレ率とは、消費者が今後インフレに進んでいくのかデフレに進んでいくのかという予測・期待的なもので、それにより消費者は、消費行動をとります。期待値と同じってことは、現時点で、インフレ傾向もデフレ傾向も無いってことですね。
ということは、現時点での賃金のあり方に満足していることを示しており、フィリップ曲線で言うところの、縦軸が0の場合にいると考えられます。さらにいうなれば、その場合、完全雇用の状態が成り立っていているはずです。そしてそれにも関わらず、企業側と何らかの摩擦によりやめた人の割合が自然失業率だったのでこの時点での失業率がまさに自然失業率、ということになります。aは正しいです。
では、bも一応見ましょう。現実の失業率が自然失業率よりも高いとき、つまり景気が悪くなって賃金(物価)も安くなっている状態です。「現実のインフレ率は期待インフレ 率よりも高くなる」これはどうでしょう?つまり、インフレ方向に流れると言っています。いや、そんなことはないはずです。物価が高まれば、名目賃金は下がって、雇用は増えるはずでした。つまり、失業率は低くなるはずです。よって、bは誤りと分かります。
続いて、cとdを見ていきましょう。
c 自然失業率仮説によると、短期的には失業とインフレ率の間にトレード・オフ の関係は存在しない。
d 自然失業率仮説によると、長期的には失業とインフレ率の間にトレード・オフ の関係は存在しない。
二つの違いは、短期的か長期的の違いです。これは自然失業率仮説を思い出せば、古典派の論理の話で、長期的には物価なんてものは、失業率となんら関係ないよって仮説でしたよね。つまり、長期的が正解で、dが正しいです。
よって、aとdを選んでいる2が正解になります。