令和 4 年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第六問 解答と解説

解答

 

設問1:3.

設問2:4. 

 

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解説

 

グラフ問題も入ってきて、いよいよ本格的に経済学らしい問題になってきました。「45 度線図」は、経済学・経済政策問題でお目にかかるグラフの中で頻度ナンバーワンと言えるんじゃないでしょうか。そもそも「45度線図」ってなんでしょう?Wikipedia様で検索してみます。

 

45度線分析

 45度線分析45-degree line diagram)、あるいはケインズの交差図Keynesian cross diagram)とは45度線を用いて一国の経済を分析するものである。ケインズ経済学の基本的な考えを示す非常に単純なモデルであり、マクロ経済学において1930年代から40年代のケインズ以来長期間に渡って利用されてきた。マクロ経済の短期調整プロセスの基礎的部分とおおまかな調整結果を知るのに有用なツールである

「45度線分析」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年9月20日 (火) 09:23 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/45%E5%BA%A6%E7%B7%9A%E5%88%86%E6%9E%90 

 

ケインズの交差図とも呼ばれているとは知らなかったです。一国の経済を分析するツールってことですね。どうやらおおまかな経済調整のプロセスとその結果を把握されるために使われるってことですかね。けど、なんで45度線を使うのか?

45度線分析ってのは、需要および供給から経済を分析するツールです。45度線は、縦軸に総需要(AD)、横軸には生産量(あるいは国民所得 Y)の2軸の値が等しくなるすべての点を表した直線です。等しくなる点っていうのがポイントで、その背景には、生産された付加価値は、すべて分配され、そしてそれは支出される、ということが前提となっています。つまり生産量とそれが分配されての所得(支出)の関係は等価で比例し、 AD = Y の関係が成り立つということです。

しかし、じゃあ実際の需要は45度線のようにはなっていないことを我々は知っていますね。総需要曲線は、Yd = C + G + I (前回も出たように、C消費支出、I は投資支出、G は政府支出)と表すこととして、以下の消費関数(C = c0 + cY)を用いると、総需要曲線は以下のように表されます。(これもよくよく出てくるのでチェック)

 Yd = c0 + cY + G + I

 

これを、グラフに一緒に表していましょう。

 

 

上記緑の線が、総需要曲線です。c は必ず(0 < c < 1) になりますので、45度曲線に必ずどこかで交わります。そして交点となる点が、経済の均衡となる点です。つまり、欲しいものが、普通な価格で購入可能な市場が形成されているということですね。

 

逆に交点よりも左の状態とはどういう状態でしょう?生産量よりも、需要が勝っている状態になっているのが分かりますね。つまりは、物が足りない状態で、物が高騰した状態になっているはずです。この区間インフレギャップと言います。そして、右側は逆に生産が需要を超えて生産されており、物があまっている状態で物が安くなる傾向がある状態ですね。この区間デフレギャップと言います。

45度線分析を使うことにより、今現状がどこの区間の状態であり、どのような調整をしてその結果がどのようになるか分析することがざっくりとできます。

さて、それでは問題に戻りましょう。

設問 1

 

まず設問1です。いつものaからcの正誤問題ですね。分かりやすいのから、判断していきましょうということでした。aとcは、ここまで考えることができていれば、非常に簡単です。

a 総需要線 AD の傾きは、c に等しい。 

c 総需要線 AD の縦軸の切片の大きさは、C0 である。 
 
さきほど導出したように、Yd = c0 + cY + G + I ですね。
傾きは、cになります。よって、a は正しいです。
 
そして、切片の大きさは、c0 + G + Iになります。よってC0は、明らかに誤りです。
 
問題によっては、2つ明らかになれば、回答できちゃう問題もありますが、今回はそうはいかないようで、bも解答を出さなければいけないようです。
 
b 投資支出 1 単位の増加による GDP の増加は、政府支出 1 単位の増加による GDP の増加より大きい。 
 

なかなか、自信もって解答できない選択肢かもしれません。投資乗数政府支出乗数についてですが、知っているか知っていないかにはなってしまいますが、政府支出乗数は、投資乗数に一致します。よって、謝りです。Yd = c0 + cY + G + Iで表されるので、重みとして同じであるのですから、当然と言えば当然ですね。

よって、aが正しい、bが誤り、cが誤りになりますので、解答は3です。

 

設問 2

 

さて、設問2に進みましょう。また、政府支出の話です。政府支出乗数についておさらいしましょう。1単位政府支出を増やした時のGDPの増加単位が、政府支出乗数でした。そして、それは、1 / (1 - c) で表されるというのもやりましたね。

ここで、グラフをどう読むかで決まっていきます。現在のGDPはY0で完全雇用となるGDPのYFは、ずいぶん右側にある状態ですね。実際の交点から完全雇用となるGDPを目指す場合、デフレギャップの領域を埋めなければいけないです。つまり、需要を促してあげないといけないですね。

そのため、政府支出が必要で、以下のグラフで切片の増加分だけ政府支出で埋めてあげるのですが、その増加分は、AD1からAD0の幅に等しいことが下記の図からも分かりますね。これを政府支出で埋めてあげる形になります。

イメージ的には、どんどん消費をして、雇用を促していきたいけど、そもそもお金が無くて、そこまで支出ができない状況ですね。無理に生産を増やしても、買える人もいない。そんなときは政府支出を増やして、お金がみんなに分配されるようにして、消費を促していくわけですね。

 

この辺のデフレギャップを埋める問題、インフレギャップを埋める問題はとても頻出ですので、内容的なところからしっかり覚えていく必要があります。

で、選択肢を見てみましょう。AD0からAD1の間を埋める政府支出の増加を言っている4が正解になります。