令和 4 年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第五問 解答と解説

解答

 

4.

 

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解説

 

さて、いよいよこれぞ経済学っていうような問題が出てきました。式がわんさか出てくると、うっとなる人も多いはず。今回は、ゆったりと解いていく方針で、まずはひとつひとつの式が何を意味しているか考えていきましょう。

まず最初の式です。「市場の均衡条件」って何かって正確に答えることができるでしょうか?その市場の需要と供給量が一致する条件のことですね。需要と供給のバランスが確立され、価格も一定に安定する状態を均衡状態とよび、その条件パラメータの式が、均衡条件式になります。

  • 生産物市場の均衡条件 Y = C + I + G 
ちょっとこれだと分かりにくいので、用語に落とし込みます。とはいえ、このアルファベットが意味する項目は、必ず同じですので、覚えてしまった方が問題文を読みやすいです。
  • 生産物市場の均衡条件 所得 = 消費支出 + 投資支出 + 政府支出 
さて、ちょっとは読みやすくなりましたかね?つまり、均衡条件が成り立つ市場では、生み出された所得は、「消費支出」、「投資支出」、「政府支出」により支出された額と等しくなるということですね。
 
ここで式の意味とかはあまり考えず、そのまま受け取りましょう。この条件のもと、均衡した市場を考えましょうという前提条件ととらえましょう。消費関数をいったん飛ばして、その先を見ると、なんと親切に、I=30, G=60と言ってくれています。つまり、今回の式は、以下のようになります。
  • 所得 = 消費支出 + 投資支出( = 30) + 政府支出( = 60) 
        = 消費支出 + 90
さて、次がいよいよ消費関数ですね。この形式で表される消費関数をケインズ型消費関数と呼び、その変化形も含めると、この試験で最もお目にかかる式のひとつになるでしょう。
  • 消費関数 C = 10 + 0.8 Y 
先にちょっとケインズ型消費関数に触れておきましょう。
 
ケインズ型消費関数

 

CcYで表される。定数c限界消費性向、Yは所得、bは基礎消費です。基礎消費とは、消費者が欠くことができない、所得に依存しない消費のことを言います。さて、限界消費性向とはなんでしょうか?これは所得が1増えたときに、消費をどれくらい増やすかという割合のことです。そのため、ケインズ型消費関数では、Yの係数として存在していますね。グラフにすると以下みたいな感じですね。
 

 
さて、問題の消費関数に戻りましょう。C = 10 + 0.8 Y つまり、10が基礎消費にあたり、0.8が限界消費性向となります。当てはめると以下のような感じですね。

しかし今回、均衡条件として、すでにY = C + 90が与えられています。この式の形を変えると、C = Y - 90となります。この式を図に表してみましょう。

 

正確な図にはなっていませんが、2本の線はこんな感じに交わります。(Y, C) =(500, 410)
ぱっと、ここまで読んで、これくらいが頭の中で簡単にイメージできれば、もう解けたようなもんです。さて、問題を読み進めましょう。
「貯蓄意欲が高まって、消費関数が C = 10 + 0.75 Y になったとする」
つまり、みんなが突然、こんなに消費していたら将来駄目だ!貯金しようって思い立ち、限界消費性向が低くなってきたわけですね。これも、図に出してみましょう。
 
 
そして、問題は、「こ のときの政府支出乗数の変化に関する記述」についてです。では、選択肢を見ていきましょう。
 
まず一つ目です。

1.貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は 4 のままであり、変化しない。 

ここにきて、いきなり政府支出乗数って何?ってなると、いきなり難易度があがりすごくもったいない結果を招きます。政府支出乗数というのは、1単位政府支出を出した際に、どれくらいGDPの増加に寄与するかという数値です。え、今回の話に関係あるの?って感じになっちゃうかもしれませんが、大いに関係あります。つまり、政府支出により消費がどれくらい増えるのかってことになります。政府支出乗数は、限界消費性向から求められます。導出するロジックは、ここでは割愛します。最終的な公式は、簡単なのでこのそのまま覚えてしまいましょう。
  政府支出乗数 = 1 / (1 - 限界消費性向)
今回の場合は、最初の状態は、限界消費性向が0.8なので、政府支出乗数は、1 / (1 - 0.8) = 5となります。
そして、貯蓄意欲が高まって、限界消費性向が0.75に減りましたので、政府支出乗数は、1/(1-0.75) = 4となります。
ということで、「4のまま」というのがそもそもで誤りです。
 
さて、2つ目です。
2.貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は 5 のままであり、変化しない。 
最初、政府支出乗数が5というのは合っていますが、変化しないというのはどうでしょう?貯蓄意欲が高まって、消費関数が C = 10 + 0.75 Y となったとあり、限界消費性向も、0.75に落ちていますね。このときの政府支出乗数は、1 / (1 - 0.75) で、4になります。ということで、2つ目も誤りということになりますね。
 
3つ目と4つ目をまとめてみましょう。
   3. 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は 4 から 5 へと上昇する。 
   4. 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は 5 から 4 へと低下する。
 
最初が5で、その後貯蓄意欲が高まったあとは下がって4になっているのは、選択肢4ですね。
ということで解答は、4となります。
 
あれ、よくよく考えると、グラフにいろいろ表しましたけど、全然使いませんでしたね?そういうこともあります。