引き続き相続関連です。いや、最後まで相続関連で締めくくるわけですね。今回は、問題文からひとつずつ考えていきましょう。
1.相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分について、登記その他の対抗要件を備えなくても、第三者に対抗することができる。
これは、共同相続における権利の承継の対抗要件についてです。
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
これもまた、初見殺しで、初見では、正直何を言っているのかさっぱり分からないです。「遺産の分割によるものかどうかにかかわらず」ってのは、遺言とかで分割されたかどうかにかかわらず、ってことで、たとえ遺言で、全部長男に財産は相続させるぜって書いていても、すでに、第三者へ登記、登録が移ってしまって、自分に無い場合は、それを取り返すことはできませんよってことです。
例えば、妹が借金してて、自分の法定相続分を、勝手に売ってしまって、あとから実は長男が全相続だた場合でも、登記、登録がすでに移動していては、対抗することはできませんっていうことです。昔の古い民法では、対抗ができたようです。
以上より、これは古い情報となりますので、誤りです。
2.相続人が数人ある場合において、一部の相続人が相続放棄をしたときは、放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同しても、限定承認をすることができない。
まず、限定承認を受けるには、相続人全ての人で行う必要があります。しかしながら、相続を放棄した者については、相続人とは見なされないので、この限りにはなりません。よって、この記述は誤りです。
3.相続人が相続財産である建物につき、 5 年の賃貸をしたとしても、単純承認をしたものとはみなされない。
相続財産である不動産関連の賃貸を、以下に当てはまる短期賃貸に当たる場合については、単純承認とみなされません。
(短期賃貸借)
第六百二条 処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月
建物は三年までです。よって、5年賃貸した場合は、単純承認とみなされます。よって誤りです。
4.被相続人の配偶者が取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、居住建物の引渡しでは認められず、配偶者居住権の設定の登記をしなければならない。
まず、配偶者居住権についてです。
(配偶者居住権)
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
(配偶者居住権の登記等)
第千三十一条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
そして、その中の六百五条の四の規定とは、、、
(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
配偶者居住権については、第三者への対抗手段になりますが、やっぱり登記がされている必要がありますよってところで良いかと思います。この説明の通りです。正解です。
以上より、4が正解となります。