4.
産業財産権法に関する問題です。特許関連ですね。この辺は、頻出で、覚えることも山ほどあります。とはいえ、一度に全部覚えるのは無理なので、問題を通して一つ一つを深堀していきましょう。
とはいえ、まずは「産業財産権」とは何でしょう?産業財産権とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の総称です。新しい技術、デザイン、名前などを保護して、模造されることを防止する権利です。それぞれ簡単に意味を確認しておきましょう。
特許権
なんとなく、新しいもの作ったときは特許だみたいな感じで、特許が総称に思われている人もいるかもしれません。特許は新しい「発明」を保護するための権利です。「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度なものをいいます。当然ながら、程度の低い当たり前の技術を特許にすることはできません。
実用新案権
物品の形状、構造、組み合わせに係る考案を独占排他的に実施する権利です。特許と同様に、自然法則を利用した技術的思想からの創作であることに変わりありませんが、実用新案権の場合、高度である必要はありません。
意匠権
新規性と創作性などの一定の登録要件を備え、特許庁が登録することにより発生する独占排他権のことを言います。
物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合、建築物の形状など画像であって、視覚を通じて美感を感じるものについての権利を言う。
商標権
商標権とは、商品やサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権である。同一の商標・指定商品などだけではなく、類似する範囲にも及びます。
また、商標として保護される対象となるのは、文字、図形、記号、立体的計上、音なども含まれます。
ざっくり、これら4つの産業財産権については、イメージが沸いたのではないでしょうか。では、問題に進みさらに深堀していきましょう。
1.意匠法には、国内優先権制度が規定されている。
国内優先権制度とは、日本国内において、出願済みの特許出願の内容について、出願から1年以内であれば、内容を改定することを認める権利のことです。
この権利は、上記4つの産業財産権のうち、特許権と実用新案権について、認められた権利となっています。意匠権や商標権には、国内優先権制度は認められていません。
よって、この説明文は誤りとなります。
2.実用新案法には、出願公開制度が規定されている。
出願公開制度は、出願後一定の期間(出願日から1年半の間、 優先権主張がされている場合は優先日から1年半)を経過した時には、審査の段階の結果によらず、特許出願の内容を公衆に知らせる制度です。つまり、他社に、もう申請したぜって知らせて、他が類似の研究をして後から申請されることを防ぐことになります。1年半よりも前に公開してほしい場合は出願公開請求をすることで可能です。
この出願公開制度は、特許法、および商標法にのみ適用された制度になります。実用新案法、または意匠権法には適用されませんので、本説明は誤りとなります。
3.商標法には、出願審査請求制度が規定されている。
これは特許特有の制度です。特許、つまりは発明提案は、高度な技術提案であり、複雑で新規性を主張し、それを判断していくのは非常に労力がかかります。また、出願した側についても、よくよく考えると、新規性が無いことが後から分かったり、使い道がないことが判明したりと、お金かけて特許出願する必要もなかったかっていうこともあり得ます。
そのため、特許については、出願してから3年間の間、いわば猶予の期間が用意されており、それまでに本当にこの特許出願を、審査して認めてもらうかを考える期間が与えられます。いやいや大丈夫というときには、改めて出願審査請求を行い、審査に進むわけです。出願しただけでは、審査は行われないことに注意です。
よって、この制度は特許権法のみであり、その他の実用新案法、意匠法、商標法では、適用されない制度になります。よって、誤りです。
4.特許法には、不実施の場合の通常実施権の設定の裁定制度が規定されている。
「裁定通常実施権」とは、特許発明が出願日から4年経過し、3年以上継続して実施されていない場合や、公共の利益のために特に必要な場合において、特許庁長官(場合によっては経済産業大臣)に、実施権の裁定請求を行うことができることをいう。
そして、これが認められた場合には、出願者の意図に関係なく、特許発明の実施することができる。これは、社会的な損失などを踏まえた判断のもと行われる。この裁定制度については、特許法のみに適用される制度です。実用新案法、意匠法、商標法では、適用されない制度になります。よって、この説明は正しいです。
以上より、正解は4となります。