設問1:3.
設問2:1.
再び会話問題です。
会話自体には、あんまり意味は無いですが、背景を読み解いておいた方が問題は解きやすく、理解も深まります。とりあえず、会話を分解していきましょう。
甲 氏:「最近、私の友人が株式会社を立ち上げました。私も、株式会社をつくっ
て、事業をやりたいと思います。友人の株式会社は、公開会社ではない株
式会社と聞きました。公開会社ではない株式会社とは、どのような会社で
すか。」
事業を始めるなら、公開会社くらいは調べておこうよとも思いますが、ここでは公開会社が話題となっており、質問がされています。
あなた:「公開会社ではない株式会社とは、発行する全部の株式が譲渡制限株式で
ある会社をいいます。」
公開会社の説明をしています。譲渡制限株式とは、その名の通りではありますが、株式の譲渡に制限がある株式のことです。発行会社の承認が必要となります。なお、譲渡制限株式会社と名乗る場合は、すべての株式を譲渡制限株式となっていることが条件となっています。主には、弱い会社が株式を買い占められて、乗っ取られることを防止するために、譲渡制限株式を設ける場合があります。また、譲渡制限株式会社の場合、取締役会や監査役を持たなくて良いというメリットがあります。
公開会社に対して、譲渡制限株式会社を「非公開会社」とも呼びます。
甲 氏:「公開会社ではない株式会社には、どのような特徴があるのでしょうか。」
非公開会社について、さらに質問がされています。
あなた:「公開会社ではない株式会社の場合には、 [ A ] 。」
ここが問題ですね。設問1にて解説します。
甲 氏:「ありがとうございます。今後、実際に株式会社を設立する場合、どのよ
うな点に注意すればよいのでしょうか。」
さらに注意点のアドバイスを求めています。
あなた:「 [ B ] 。」
甲 氏:「ありがとうございます。分からないことがあったら、またお伺いしま
す。」
あなたは、何かアドバイスを返したようです。ここは設問2で解説します。
問題を読んでいきましょう。会話の流れから、非公開会社の説明をしていることに注意しましょう。
1.議決権制限株式を発行するときは、発行済株式総数の 2 分の 1 以下までしか発行できません
さて、まずは議決権制限株式とはなんのことでしょうか?株主には、株保有数に応じて、議決権があるよと説明をしました。その議決権を制限する株式ということです。つまり、株は発行してやるけど、この株持っていても議決権は無いよっていう株式のことです。なお、このように株主の権利に制限を設けるような株式を総称して、「種類株式」といいます。その他の種類株式については、別のところで説明します。そして、この議決権制限株式の発行可能数について、公開会社と非公開会社では違いがあります。
公開会社では、「発行済株式総数の 2 分の 1 以下までしか発行できません」。しかし、非公開会社では、その制限はありません。つまり極端には全部が議決権制限株式でも良いということです。
問題文は、これは公開会社の方の説明になっています。よって、誤りです。
2.社債を発行することはできません
社債の発行については、公開会社・非公開会社ともに、発行することが可能です。
3.剰余金の配当を受ける権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができます
すでに説明したように、株主の権限を抑制する種類株式についての説明はしましたが、ここでの問題は種類株式についてではありません。
非公開会社については、種類株式を発行せずとも、定款で株主ごとに異なる取り扱いをすることができます。例えば、Cについては、議決権を使えないよとかです。もちろん株主総会における決議は必要となりますが。
よって、ここの説明は合っています。
4.定款で株券を発行する旨を定めることはできません
歴史を言うと、昔の旧商法では、株券を発行することが原則となっており、株券が不要な場合には、定款により、発行しない旨を定めることができました。
しかし、現実的には株券を必要としない場合がほとんどであったことから、新しく制定された会社法では、株券を発行しないことを原則として、株券が必要な場合には、定款により、発行する旨を定めることをできるようにしました。
つまりは、旧商法とはまったくの逆になったわけですね。よって、この選択肢は誤りです。
以上より、正解は3となります。
設問2は「実際に株式会社を設立する場合」の注意点についてのアドバイスがされているはずです。問題文を読んでいきましょう。
1.株式会社を設立するに当たって作成する定款には、商号を記載又は記録しなければなりませんので、考えておくとよいでしょう
定款についての注意点です。これは、Wikiを確認していきましょう。
定款(ていかん)とは、法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規約・基本規則そのもの(実質的意義の定款)、およびその内容を紙や電子媒体に記録したもの(形式的意義の定款)のこと。
日本法における定款
日本法の場合、会社から一般社団法人や一般財団法人、特殊法人(日本銀行・日本放送協会等)に至るまで根本規則は定款と呼ばれる。かつての財団法人においては根本規則は「寄附行為」といったが、2008年12月の一般社団・財団法人法の施行以降は「定款」に統一されている。ただし、私立学校法の学校法人など根本規則が「寄附行為」となっている法人もある(私立学校法30条など)。また、宗教法人法の宗教法人のように「規則」となっている法人もある(宗教法人法12条など)。
定款の記載事項には以下の分類がある。
- 絶対的記載事項
- 法律の規定によって、定款に必ず記載しなければならない事項。これらが記載されていない場合は定款自体が無効となる。
- 相対的記載事項
- 法律の規定によって、定款に記載しなければ効力を持たないこととされている事項。定款に記載しなくても定款全体の有効性には影響しない。単に、当該事項が効力を有しないだけである。
- 任意的記載事項
- 定款へ記載しなくとも定款自体の効力には影響せず、かつ、定款外においても定めることができる事項。重要な事項について事を明確にする目的などで定款で定めることが多い。定款に記載することによって、定款変更の手続きによらなければ変更できなくなるため、変更を容易にできないようにすることができる。法律の規定に違反しない限り認められる。
民法に基づいて設立された社団法人(民法法人)については、この分類のうち任意的記載事項や相対的記載事項に関する条文が無かったため、その有効性等に学問上、疑義があった(ただし、判例は任意的記載事項の有効性は認めていた。)。しかし、民法の「法人」に関する規定は、2008年12月1日をもって廃止され、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)に改組されるに当たり、同法12条によって、一般社団法人ないし公益社団法人(≒現行法の民法法人)の定款にも任意的記載事項及び相対的記載事項が認められる事が明文化された。一方、会社法上の法人については、最初から上記の三つの記載事項の存在が予定されている条文がある(会社法29条、577条)。
絶対的記載事項 | 社団法人(民法) | 一般社団法人 | 合名会社 | 合資会社 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|---|---|---|---|
目的 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
名称又は商号 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
主たる事務所又は 本店の所在地 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
社員の氏名又は名称及び住所 及び 各社員の責任の限度に関する規定[1]。 |
× | × | ○ | ○ | ○ | × |
社員の出資の目的 及びその価額又は評価の標準 |
× | × | ○ | ○ | ○ | × |
発起人又は設立時社員 の氏名又は名称及び住所 |
× | ○ | × | × | × | ○ |
設立に際して出資される財産 の価額又はその最低額 |
× | × | × | × | × | ○ |
発行可能株式総数 | × | × | × | × | × | ○ |
公告方法 及び事業年度 |
× | ○ | ×[2] | ×[2] | ×[2] | ×[2] |
資産に関する規定 理事の任免に関する規定 |
○ | × | × | × | × | × |
社員の資格の得喪に関する規定 | ○ | ○ | × | × | × | × |
(注意)
- 1 「各社員の責任の限度に関する規定」とは、合名会社は「社員の全部を無限責任とする旨」、合資会社は「社員の一部を無限責任社員とし、そのほかの社員を有限責任社員にする旨」、合同会社は「社員の全部を有限責任とする旨」の規定のことをいう。
- a b c d 任意的記載事項である。しかし会社の公告方法は定款に記載のない場合には官報によってすると定めたものと擬制される。
「定款」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年10月18日 (火) 13:15 UTC、
URL: 定款 - Wikipedia
絶対的記載事項については問われることが多いので、覚えておきましょう。 株式会社では以下の6つが必要ということですね。
- 「目的」、
- 「名称又は商号」、
- 「主たる事務所又は本店の所在地」、
- 「発起人又は設立時社員の氏名又は名称及び住所」、
- 「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」、
- 「発行可能株式総数」
そして、アドバイスの通り、商号が必要となっているので、このアドバイスは正しいですね。これが正解です。
2.株式会社を設立するに当たって作成する定款は、電磁的記録により作成することはできませんので、注意してください
定款は電磁的記録することが許容されています。ただし、嘱託人が電磁的記録に電子署名を行い,その電磁的記録に指定公証人が認証を与えることが必要となります。
選択肢としては、これは誤りです。
3.株式会社を募集設立によって設立する場合、最低資本金の額は 300 万円となりますので、注意してください
会社設立時において、事業の資金となる資本金を払い込む必要があります。現行法においては、これは1円からでもOKで、極端な話1円から会社を設立することが可能です。これは募集設立、発起設立いずれの場合においても変わりません。
なお、旧商法においては、株式会社の最低資本金は1000万円となっていました。そして、有限会社についての最低資本金は300万円となっていました。
よって、この説明文は誤りとなります。
4.発起人は 3 名以上でなければなりませんので、甲氏のほかに発起人となってくれる人を探しておくとよいでしょう
発起人とは、そもそもなんでしょうか?
発起人とは、会社を設立する際に、資本金を用意して、基本的な規則などを決めて、定款を定める人です。会社設立後は、資本金に応じて、株式が発行され、株主となります。
発起人の人数は1名以上いれば良いことになっており、また上限人数はありません。よって、この説明は誤りです。
以上より、正解は1となります。