令和 4 年度 第 1 次試験問題 財務・会計 第二十ニ問 解答と解説

解答

 

4.

 

解説

 

割引現在価値の計算は、すでに出てきましたね。ただし、リスクがある場合というただし書きがついているのに注意です。

先に選択肢に目を通してもらうと分かるように、1と2が確実性等価法についてで、3と4がリスク調整割引率法の選択肢になっています。まずは、この2つの意味を確認していきましょう。

さて、まずは確実性等価法です。確実性等価とは、まずリスクがある投資があって、それと同等の効用(満足感)がある、確実な投資のことです。まあ、よくある例ではありますが、10,000円の投資で50%の確率で3倍になります。50%の確率でゼロになりますっていうハイリスク・ハイリターンな話があったとします。期待値としては15,000円になりますね。しかし、その横で100%10,000円投資してくれれば15,000になります!っていう確実な投資がありました。つまり、確実に5000円儲かる話です。

人はどちらに流れるでしょう。人の性格が出ますね。意外とリスク有りの方にも人が流れそうです。ただおそらくは5,000円確実に取れる話に乗る人が多いでしょう。ということは、期待値で投資の評価はできないということですね。確実性等価は、15,000よりも低くなりそうです。が、いったん、仮に15,000円を確実性等価とした場合、ハイリスクな投資で3倍儲けた場合の30,000と確実性等価15,000の差である15,000を、リスクプレミアと呼びます。

さて、確実性等価の一般的な意味に触れてきましたが、今回聞かれているのは、ちょっと趣向が違います。割引現在価値の計算に関する記述についてです。割引現在価値については、何度か出てきましたが、これの導出方法には3つの方法があります。ざっと、それぞれの手法を概要のみ記載します。(詳細は、ここでは省きます。)リスクフリーレートのみ触れておくと、リスクがない投資の利回りです。

  • 割引率調整法

リスク調整後の割引率と、確実性の高いキャッシュフローを用いる手法。

  • 確実性等価法

リスク調整後のキャッシュフローと、割引率として信用リスクフリーレートを用いる手法。

  • リスク調整法

リスク調整前のキャッシュフローと、割引率としてリスクプレミアムを含めた割引率を用いる手法。

 

今回の問題の話題は、上記の3手法のうち下の2つですね。では選択肢をひとつひとつ見ていきましょう。

 

1.確実性等価法で用いる割引率は資本コストである。

瞬間で分かりますね。確実性等価法での割引率は資本コストではありません。信用リスクフリーレートが用いられます。やや、割引率に資本コストっていうのもちょっとよくわからないです。これは誤りです。

 

2.確実性等価法は、将来キャッシュフローの期待値をその不確実性が大きいほど、高めに見積もる方法である。

リスク調整後のキャッシュフローの期待値として扱うとしています。リスク調整には、シャープレシオ、アルファ、情報比など手法はありますが、リスクに応じた重みづけがされ、投資の比較などのためにされる処置です。そのため、不確実性が大きいほど高めにというのは誤りです。

 

3.リスク調整割引率法とは、割引率からリスク・プレミアムを差し引いて、現在価値を求める方法である。

真逆なことが言われちゃっていますね。リスク調整割引率法は、リスク・プレミアムを含めた割引率が用いられます。誤りです。

 

4.リスク調整割引率法におけるリスク・プレミアムは、将来キャッシュフローが不確実であるほど大きくなる。

基本的にはハイリスク・ハイリターンが成り立ちますので、不確実なほど、確実性等価からは離れ、さの差額であるリスク・プレミアムは大きくなります。よって、これは正しいです。

以上より、解答は4になります。