令和 4 年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第二十問 解答と解説

解答

 

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解説

 

まずこの問題を読むうえで、必要な知識であるナッシュ均衡を見ていきましょう。

ナッシュ均衡 (Nash equilibrium)

ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種であり、いくつかの解の概念の中で最も基本的な概念である。数学者のジョン・フォーブス・ナッシュにちなんで名付けられた。

ナッシュ均衡は、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせである。ナッシュ均衡の下では、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない。

ナッシュ均衡は必ずしもパレート効率的ではない。その代表例が囚人のジレンマである。

ナッシュ均衡」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年3月3日 (水) 07:33 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E8%B2%A1

 

色々、知らない言葉も出てきているかもしれませんが、とりあえずナッシュ均衡についてのみここでは考えましょう。

簡単に言うと、相手の選択が自分の利害を及ぼすようなゲームを考えた場合に、どのプレーヤーも最悪ケースを考慮して戦略を考えたときに、最大利益を得ることができないということです。分かりやすく言ったつもりが、全然わかりやすくもなかったかもしれません。いわゆる囚人のジレンマという問題です。

銀行強盗をはたらいた2人(AとB)がいたとします。AとBは、逃走中に失敗して捕まってしまいます。しかし、まだ彼らが銀行強盗という証拠は出ていません。2人は容疑者として別々の取調室に入れられます。

調査官は、2人にそれぞれこういいます。「もし2人とも自白すれば、2人とも禁固1年で許してやろう。しかし、1人だけ自白して、もう一人は黙秘した場合、黙秘した者は10年独房に入ってもらおう。どちらも自白しなかった場合は、半年だけ牢獄に入ってもらおう。」

 上記の条件を表にまとめてみます。()内は、A,Bそれぞれが独房に入る期間を表しています。

 

(PA,PB) B
自白 黙秘
A 自白 (1,1) (0,10)
黙秘 (10,0) (0.5,0.5)

 

 明らかに、AとB、どちらも黙秘をしているのが、お互いの最高の結果をもたらせることは、どちらもわかっています。しかし、ここでAは考えてしまいます。自分が自白だったらどうするだろう?Bは必ず自白を選びます。黙秘すると、自分が10年になってしまいます。じゃあ、自分が黙秘したらどうか?Bは裏切って自白してくるかもしません。何しろその場合、Bは0年です。そう思うと、いずれにせよBは自白するという選択をすると考えれます。

そしてその場合、Aはどうするべきかというと、自白しか選択肢はありませんね。黙秘して10年なんてまっぴらです。このように自白 x 自白が導き出されることこそが、ナッシュ均衡です。ちなみに、相手の裏切りを考えることなく、最高の解を考えることは、パレート最適といいます。つまり裏切りを考慮しないということですね。

では、問題の表を考えましょう。

同じようにA国がどう考えるか見ていきましょう。まず、A国が環境保護を優先した場合、B国は、経済成長に力を入れることで、A国を大きく突き放して利益を得ることができます。よって、経済成長に力を入れるでしょう。次に、A国が経済成長に力を入れる場合、B国は当然、対抗して経済成長に力をいれるしかなくなるでしょう。ということは、B国は必ず経済成長に力を入れると考えざるを得なくなります。であるなら、A国も経済成長に力を入れるしかなくなってしまいます。

選択肢を見ていきましょう。

1.このゲームでは、A国が「環境保護」を優先させる政策を選べば、B国は「経
済成長」を優先させる政策を選ぶ方がよい。

はい。これはその通りでしたね。B国は、A国なんて気にすることなく、経済成長を推し進めて、1000の利益を上げることができます。あれ、正しいのを選ぶのでしたね。もう回答が出てしまいました。

しかし念のため、2つ目以降も見ていきましょう。

 

2.このゲームでは、両国が協調して「環境保護」を優先させる政策を選べば、利
得をさらに高めるために、戦略を変える必要はない。

 強調した場合、利益は500です。しかし、裏切って裏で経済成長に力をいれておけば、1000儲けが出るわけです。もちろん戦略を変える必要はありますよね。

 

3.このゲームにおけるA国の最適反応は、「環境保護」を優先させる政策を選ぶ
場合である。

最適反応は、経済成長に走るのがよさそうでしたね。

 

このゲームのナッシュ均衡は、両国が「環境保護」を優先させる政策をとる組
み合わせと、両国が「経済成長」を優先させる政策をとる組み合わせの 2 つであ
る。

 2つ出てきては、ナッシュ均衡と呼べません。かならず経済成長を選ぶのが、どちらもよいです。

 

 以上より正解は1になります。