令和 4 年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第十七問 解答と解説

解答

 

4. 

 

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解説

まず、完全競争と不完全競争について、言葉としては聞いたことはありますが、正確におさえていない人も多いと思います。ここで、しっかりと言葉の意味を抑えておきましょう。

 

完全競争 (perfect competition)

『全ての経済主体家計企業)が価格を「所与」として行動している』という仮定である。完全競争における経済主体は価格に対する影響力を一切持たないため、彼らはプライス・テイカprice taker価格受容者)と呼ばれる

新古典派経済学の代表的な仮定であり厚生経済学の基本定理が成り立つための必要条件とされる

「完全競争」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年7月29日 (金) 09:30 UTCURL: 

ja.wikipedia.org

 なんだか、分かりそうで分からない説明に思えて仕方ないですね。

 つまりは、価格を決めるのがある企業とかではなく、経済活動の中の一連の流れの中で決まっていくものであって、経済の主体となる家計や企業が独占的に決めることができることなどはできないことが、完全競争の条件であるということですね。

 プライス・テイカと言う言葉は、あまり日常的に使用する言葉では無いですが、そのような市場から形成された価格を受け入れる経済主体のことをさして言います。その逆の意味で、価格を独占的に決めるプライス・メイカと言う言葉があります。

 

 では、不完全競争とはその逆の意味になるのでしょう。

不完全競争 (Imperfect competition)

これは完全競争が成立していない市場の状態を表す言葉であり、現代の経済活動の状態でもある。現代の経済活動においては、販売する商品が同一であっても、それを販売する業者の規模が大きいほど大量仕入れや大量販売などが可能となり、そこからより安く販売するということが可能となるので大企業ほど有利なのである。不完全競争となっている社会は販売者の数が少なく競争も緩やかな状態の社会であるので独占寡占などが存在する。さらに、消費者が高値で商品を買うこととなってしまう場合が多い。しかし、多くの業者が同じ商品の扱いに参入してきた場合、競争が激化し高値で売る業者は淘汰されることになり、消費者はより良い価格で商品を入手することが可能となる。このような競争がさらに進んで、商品の販売価格が限界まで低くなり、全ての店が最安値で販売するようになった状態のことを完全競争という。

「不完全競争」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年1月8日 (金) 18:38 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E8%B2%A1

まさに、完全競争の逆ですね。独占・寡占が存在し、消費者は高値で商品を購入することになる状態です。このような独占的市場が、不完全競争の状況を生み出します。そのような市場では、独占的な企業が存在し、プライス・メイカーとして自分に都合の良い価格を設定します。

さて、完全競争と不完全競争で、競争の種類が全て表されているかというと実はそうではありません。独占的競争という状態があります。

独占的競争 (Monopolistic competition)

市場に多くの企業が存在し互いに競争をしているが、個々の企業が差別化財を生産しているためある程度の独占力を持ち、競争が不完全である状況のこと

独占的競争市場は、市場の多くの企業が存在するという点で完全競争市場に近く、個々の企業がある程度の独占力を持つという意味で独占市場に近い。完全競争市場と独占市場の間に定義できる概念である。完全競争市場と独占市場の間に定義できる市場に寡占市場、複占市場があるが、これらの市場では企業の数は2社のみだったり、数社にとどまる。独占的競争市場には完全競争市場のように「多くの」企業が存在するので、寡占や複占とは異なる。独占的競争市場では、個々の企業は他の企業が設定する価格を所与とする。つまり、自社の価格が他の企業の価格に影響して自分の企業に影響する効果は無視する

「独占的競争」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年1月8日 (金) 18:38 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E8%B2%A1

 不完全競争とは異なり、販売者はたくさんいるのですが、それぞれがそれぞれの差別化がされていて、その集団がプライス・メイカーとなりえる存在となっている。たとえば、似たグレードの衣類だったり、食品産業などがこれにあたります。彼らは、価格を受け入れているわけではなく、販売者全体で集団的に価格が決定していくといった状態です。

また財の差別化という観点も、これらの状態には重要な観点となってきます。完全競争の状態は、差別化がない同質財に対して、競争がされ市場で価格形成が成り立つものです。しかし、独占的競争のような状態、または不完全競争市場でも複数社の寡占状態では、それぞれが差別化された製品を出す状態がありえますので、異質財を扱う場合があります。(同質財で寡占された状況もあり得ます)。完全に1企業が独占したような市場では、当然ながらその企業のみ商品を扱うため、差別化という考えがありません。

 

さて、情報としては出そろったはずですので、問題を見ていきましょう。

 

a 完全競争市場の売り手は多数であるのに対して、独占的競争市場では売り手が
少数である。

独占的競争市場の言葉を知らないとうっかり、正にしてしまいそうです。独占的競争では、売り手は完全競争市場と同様に多いんでしたね。よって、誤りです。

 

b 完全競争市場の売り手はプライス・テイカであるのに対して、不完全競争市
における売り手はプライス・メイカである。

完全競争市場では、経済主体は市場の流れから形成された価格を受け入れる存在、プライス・テイカで、不完全競争市場においては売り手は少なく、独占・寡占状態になり、それらの売り手はプライス・メイカとなるんでしたね。正しいです。

c 完全競争市場の売り手が同質財のみを生産するのと同様に、不完全競争市場
おける売り手も同質財のみを生産する。

不完全競争市場では、差別化された製品をもって競争する場合があるため、同質財のみとは限りません。よって、誤りです。

 

以上より、誤・正・誤となっている4が正解になります。