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国民経済計算が、今回のポイントです。
国民経済計算 (System of National Accounts、SNA) とは、ある国の経済の状況について、他の国と比較するために体系的にまとめられた国際的な決まり、と言えると思います。
以下は、Wikipedia からの引用である。
国民経済計算
一国の経済の状況について、生産、消費・投資などのフロー面や、資産、負債などのストック面を体系的に記録したもの。
国際連合は、各国の経済活動を比較できるよう統一した基準を定めており (United Nations System of National Accounts, UNSNA) 、国民経済計算はこの基準に基づいて作成されている。最新の基準は2008年に採択された2008SNAとなる。
国民経済計算では、生産と所得の分配状況や、所得をどこから受け取りどこ向けに消費したか等を見ることができる。なお、経済成長率の指標としてよく使われる国内総生産 (GDP) は、1993SNAの中の項目の一つ。
「国民経済計算」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年8月11日 (木) 14:51 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%B5%8C%E6%B8%88%E8%A8%88%E7%AE%97
そして、Wikipediaにもある通り、国内総生産(GDP)も、その項目のひとつに過ぎないわけですね。この国際基準は、不定期でアップデートがされており、最新は2008年のSNAとなっています。日本では2016年に2008SNAに対応しており、やや、対応が遅れている感じがあります。
と、国民経済計算について説明しましたが、ここでの問題の主題は実はGDP (国内総生産)であります。GDPはまさに国民経済計算の代表格であり、国家間の経済指標を比較するのに最も使われる指標のひとつではないでしょうか。
この問題、正直なところすべての正誤を単純に判断するのは非常に難しいと思います。真面目に文章を読んでいき、これどっちだっけかなって首をかしげた人も多かったのではないでしょうか?
この問題は、すべての正誤を付ける問題ではなく、正しいものを見つける類の問題です。最初に言ってしまうと正解は "5" であり、これを素早く明白に正しいと判断できることが重要になってきます。その他の選択肢は、まどわすための選択肢と言ってもいいです。では、選択肢5を見てみましょう。
5. 持ち家の帰属家賃や農家の自家消費は、市場において対価の支払いを伴う取引が実際に行われているわけではないが、家計最終消費支出に含まれる。
GDPに含まれる・含まれない問題において、注意すべきものの代表格の問題です。「帰属家賃」と「農家の自家消費」は、GDPに含まれる項目として、必ず覚えておきましょう。これをすぱっと正しいと判断できれば、他の目くらましの選択肢にまどわされる必要はありません。
なお、帰属家賃とは、持ち家はそもそも家賃はかからないものではありますが、家賃に換算した場合、どれくらいの家賃を支払わずに済んでいるのか?という金額です。
一応、その他の選択肢も確認しておきましょう。
1. 生き物である乳牛や果樹などの動植物の価値は、GDP の計算に算入されない。
➡ 動植物であっても、サービスや商品を提供する元となるのであれば、価値が発生し、GDPに参入されます。
2.国民経済計算における国民の概念は、当該国の居住者を対象とする概念であ り、GDP の計算上は国籍によって判断される。
➡ これは今回正解ではありませんが、重要な項目です。GDPは国内の消費が含まれるのであって、ここには在日外国人の消費も含まれます。よって、国籍によって判断はされませんので誤りです。
3. 山林の土地の価値は、土地に定着するものとして、民有林の立木の評価額を含む。
➡ 含みません。民有林は別の評価となります。
4. 消費者としての家計が住宅や自動車を購入すると、耐久消費財の最終消費支出となり、総固定資本形成に計上される。
➡ 総固定資本形成は、民間住宅+民間企業設備+公的固定資本形成の総額となります。
耐久消費財は、国内家計最終消費支出に含まれます。