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まず問題を読んでいき、「下図は、1990 年以降の日本について、ジニ係数を使い、」といったところで、真っ先にジニ係数というあまり聞いたことのない単語が目に飛び込んでくる。必ずしもこの単語を知っている必要は無いかもしれないが、この単語のおおよその意味を知っていると知っていないでは、問題を解くうえでの正解率は大きく変わってくるだろう。以下は、Wikipedia からの引用である。
主に社会における所得の不平等さを測る指標である。0から1で表され、各人の所得が均一で格差が全くない状態を0、たった一人が全ての所得を独占している状態を1とする。ローレンツ曲線をもとに、1912年にイタリアの統計学者、コッラド・ジニによって考案された。それ以外にも、富の偏在性やエネルギー消費における不平等さなどに応用される。
「ジニ係数」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年9月20日 (火) 09:23 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%8B%E4%BF%82%E6%95%B0
どうやら、所得に関する不平等さを表した数値であって、0から1で表されているらしいってくらいを覚えておけば十分だろう。完全に平等な世界の場合は0で、独裁者が全ての所得を独占しているようなら1となるってことですね。
さて、続いて読み進めていくと、「所得再分配政策による 所得格差の改善状況の推移を示したものである。」とあって、どうやら、所得再分配政策によって、どれだけ所得格差が改善していっているのかというのを、前述したジニ係数を使って示しているってことですね。
「当初所得ジニ係数」は当初所得 (所得再分配前の所得)のジニ係数、「再分配所得ジニ係数」は再分配所得(所得再分 配後の所得)のジニ係数、「改善度」は所得再分配によるジニ係数の改善度(%)である。
問題文って、どうして読みにくく書くのだろうか。まず、「所得再分配政策」というものが何なのか理解していないといけないです。ざっくり言うと、所得が高い人に、税金とか、社会保障制度のための負担を大きくする政策です。富の再分配とも呼ばれます。
代表的なのが、累進課税、相続税、富裕税とかです。その他も社会保障制度、労働保証制度など、所得に応じて、負担が増える仕組みはたくさんあります。これらを総じて、所得再分配と呼びます。
それを理解したうえで、では2つのジニ係数について考えます。
当初所得ジニ係数と、再分配所得ジニ係数の定義がされています。これは、再分配所得政策が何もなかった場合の、ジニ係数(つまり、所得格差)と、再分配所得後の、ジニ係数が出されているわけですね。
この図から分かる日本の所得格差に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も 適切なものを下記の解答群から選べ。
a 1990 年代に比べて、2000 年代以降には、所得再分配前の所得格差が拡大して いる。
b 2010 年代は、それ以前に比べて、所得再分配政策による所得格差の改善度が 大きい。
c 2010 年代は、所得再分配政策によって、かえって所得格差が拡大している。
そして、上が問題文です。中小企業診断士試験ではよく見かける、a~cの文章が出て、その正誤を判定するタイプの問題ですね。a~cを見て、まずそれぞれの違いを見出すのがコツです。1990年代、2000年代、2010年代とまずは時代が分けられています。この3つの時代でざっくりと時代を見ていきましょう。
まずは、aですが、所得再分配前の所得格差が拡大している、と言っています。ということで、注目するのは、当初所得ジニ係数です。ジニ係数の定義を思い出してみると、0に近づくほど平等で、1に近づくほど格差が広がっていることを表していました。では、見てみましょう。1990代よりも2000年代以降の方が明らかに、ジニ係数は増加傾向にありますね。つまり、格差は広がっているといえます。よって、aは正しいです。
bはどうでしょうか?次は所得格差の改善度についての説明です。2010年代の改善度を見てみましょう。明らかに、それ以前よりも、改善度は高くなっているのが分かると思います。よって、bも正しいです。
cを見てみましょう。所得再分配政策により、所得格差が広がっているといっています。つまり、見るべきは、 再分配所得ジニ係数ですね。2010年代はどうでしょうか?横這いか、下手すると0に近づいているような感じですね。つまり、cは誤っています。
選択肢を確認し、正・正・誤となっている1が正解になります。