令和3年度 第 1 次試験問題 経営法務 第十九問 解答と解説

解答

 

3.

 

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解説

 

民法の定める解除に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成 29 年法律第 44 号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。

「民法の定める解除」、まずはこれってなんでしょうか?解除は、契約の解除のことです。どういった場合に解除はできるのか、その条件などが問題の焦点となります。

 

1.契約の性質により、特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したときでも、催告をしなければ、契約の解除は認められない

催告が必要かどうかってことですね。民法の第五百四十二条にて、以下のようにあります。

民法 
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
 債務の全部の履行が不能であるとき。
 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
 債務の一部の履行が不能であるとき。
 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

ざっくりいうと、債務の履行せずに決めた一定期間が過ぎると催告なしで契約解除できますよってことですね。よって、この選択肢は誤りです。 

2.債権者が履行を催告した時における不履行の程度が軽微といえないのであれば、その後催告期間中に債務者が債務の一部を履行したため、催告期間が経過した時になお残る不履行が軽微である場合でも、契約の解除は認められる。

 つづいて、催告した場合の解除についてです。

民法 
(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない

 「期間経過したときにおける債務の不履行が」ということで、そのときの不履行が軽微である場合は、解除することはできません。よって、誤りです。 

3.債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。

 債権者側の責めで債務が不履行になった場合?どんな場合かがイマイチわからないですが、債務履行拒否とかでしょうか。あるいは銀行口座が凍結しちゃったとか、会うのを拒絶とか?こんなので債権者側から契約解除されてしまったらたまったもんではないです。以下、民法より。

民法 
債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第五百四十三条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

 当然といえば、当然ですが、解除することはできません。よって、これは正しいです。

 

4.債務の不履行につき、債務者と債権者のいずれにも帰責事由がないときは、債務の全部の履行が不能である場合でも、債権者による契約の解除は認められない。 

 債務の不履行が、債務者・債権者いずれにも責めるべき事由がないとき、って、どういう状況なのか、いまいち納得できないが、以下のようにあります。

民法 
(履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由)
第四百十三条の二 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなします。つまり、債権者は解除が可能ということです。誤りです。

 

以上より、3が正解です。