令和3年度 第 1 次試験問題 経営法務 第三問 解答と解説

解答

 

4.

 

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解説

いわゆる簡易合併手続に関する会社法における記述として、最も適切なものはどれか。

簡易合併手続きに関する問題です。簡易合併手続きは、簡易組織再編のひとつであり、そのほかのやり方についても、どこかで目を通していきましょう。この辺は、一度、会社法の第二節 吸収合併等の手続あたりを読んでおくのが良いかもしれません。

なるべく、最初はシンプルに覚えましょう。まず合併には、基本的に株主総会決議による承認が必要です。この基本的にというのには、例外が存在します。それが今回の簡易合併の話です。

その例外の条件ですが、買う側の総資産が、買われる側の総資産の5分の1以下であることが条件になります。この場合、株主総会の決議を省略することが可能になります。

さらにこの場合、反対株主の株式買取請求権についても行使が不可となります。 

 

会社法 
前条第一項から第三項までの規定は、第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を存続株式会社等の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない。ただし、同条第二項各号に掲げる場合又は前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
 次に掲げる額の合計額
 吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この号において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する存続株式会社等の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
 存続株式会社等の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

 

1.簡易合併手続においては、存続会社のすべての株主に株式買取請求権が認められるが、存続会社における債権者保護手続は不要である。

前述したように、株式買取請求権については、認められます。逆に、債権者保護手続きについては必要です。よって、説明が逆になっています。 

誤りです。

2.簡易合併手続は、吸収合併契約締結から合併の効力発生日まで 20 日あれば、実施することが可能である。

前述した債権者保護手続きについて、債権者の異議を受ける期間が1か月必要になります。これは、簡易合併においても必要であるため、省略不可となっておりますので、20日ではなく、1か月が必要となります。誤りです。

3.簡易合併手続は、存続会社及び消滅会社のいずれにおいても、合併承認に係る株主総会の決議を不要とする手続である。

これは買い手のみの話です。売り手までなくなってしまうと、いきなり被害を被る可能性もあるので、これは誤りです。 

4.存続会社の全株式が譲渡制限株式であり、かつ、合併対価の全部又は一部がかかる存続会社の譲渡制限株式である場合、簡易合併手続を用いることはできない。

簡易合併手続きは、株主総会の決議を省略できると紹介しましたが、実はさらにその例外があります。ひとつが、まさにこの説明の通りで、存続会社が譲渡制限株式会社である場合です。この場合、通常の合併と同様に株主総会による特別決議が必要となります。 

その他、買収先が資産よりも債務が多い場合や、株主の一定数が反対している場合などにおいて、例外になります。

この説明は正しいです。

 

以上より、正解は4となります。