令和 4 年度 第 1 次試験問題 中小企業経営・中小企業政策 第十七問 解答と解説

解答

 

4.

 

解説

 

中小企業の資金調達手段についてです。めずらしく用語問題ですね。以下のところにすべての用語について掲載がされています。

中小企業庁:2021年版「中小企業白書」 第2節 新型コロナウイルス感染症が与えた影響と資金調達の動向

 

では、問題文から見ていきましょう。不適切なものを選ぶというところに注意しましょう。

 

EC における販売実績や会計ソフトの入力情報などのデータを、AI などコンピュータプログラムを使って分析し、融資の可否を決める手法による資金調達は、トランザクションレンディングと呼ばれる。

白書内では以下のように説明されている。

トランザクションレンディングについても、統一的な用語の定義はないが、ここではECにおける販売実績や消費者のレビュー、会計ソフトの入力情報、金融機関の預金口座情報、クレジットカードや電子マネーの決済情報など、様々なデータをAIなどコンピュータープログラムを使って分析し、融資の可否を決める手法による資金調達のことを指す。金融機関の従来型の審査において、以前は使わなかった、あるいは使えなかったデータを活用するので、従来型の審査では資金を借りられなかった企業に資金調達の道を開く可能性があるといわれてきた。』

はい。説明文と同様ですね。ですので、この選択肢は正しい文章です。

 

銀行と企業があらかじめ設定した期間および融資枠の範囲内で、企業の請求に基づき、銀行が融資を実行することを約束する契約は、コミットメントラインと呼ばれる。

次に、コミットメントラインです。

『まず、「コミットメントライン」について見ていく。コミットメントライン(銀行融資枠)とは、銀行と企業があらかじめ設定した期間及び融資枠の範囲内で、企業の請求に基づき、銀行が融資を実行することを約束(コミット)する契約のことである。当座貸越とは異なり、融資の実行を金融機関側が拒絶することができないのが特徴である。非常時以外に資金の引き出しを行わないことを前提とする「スタンドバイライン」と、いつでも資金引き出しが可能である「リボルビングライン」の2種類がある。また、契約方法にも、貸手(個別の金融機関)と借り手(企業)が相対で契約を締結する「バイラテラル方式(相対型)」と、アレンジャー(幹事金融機関)を中心に、複数の金融機関と一つの契約書に基づき、同一条件でコミットメントライン契約を締結する「シンジケート方式(協調型)」の2種類がある。』

こちらの選択肢の説明もよいですね。あっています。

 

クラウドファンディングのうち、「融資型」とは、事業者が仲介し、個人投資家から小口の資金を集め、大口化して借り手企業に融資する形態である。そのため、個人投資家は、金銭的なリターン(利息)を得ることができる仕組みとなっている。

最近よく耳にするクラウドファンディングです。

『続いて、「オルタナティブファイナンス」について見ていく。オルタナティブファイナンスとは、インターネットを活用した資金調達全般を指しており、その類型やサービスの名称について明確な定義はないが、ここでは主に、「クラウドファンディング」と「トランザクションレンディング」の二つに分けて、それぞれ動向を確認する。』

『第1に、「寄付型」とは、プロジェクトに対して資金提供者が寄付を行う形態で、商品やサービスなどのリターンは発生しない。第2に、「購入型」とは、資金提供者がリターンとしてモノやサービスを得る形態である。資金提供者は資金調達側がリターンとして設定した商品やグッズ、サービスなどを購入するような感覚で支援することができる。第3に、「融資型」とは、事業者が仲介し資産運用したい個人投資家から小口の資金を集め、大口化して借り手企業に融資する形態である。「P2Pレンディング」や「ソーシャルレンディング」とも呼ばれる。個人から集めた資金を融資するという性質を持っているため、支援者は金銭的なリターン(利息)を得ることができる。第4に、「株式型」とは、個人投資家へ未公開株式を提供する代わりに資金を募る形態である。投資家は出資先企業の詳細な情報を参考に投資を行い、非上場企業の未公開株を取得できることが特徴である。』

ちょっと文章が難しくなっていますが、支援者にリターンがあるというのが特徴です。あっていますね。

 

資本性劣後ローンの融資条件面の一般的な特徴として、①期限一括償還、②固定金利、③債権の劣後性、の 3 点が挙げられる。

『企業が資金を調達する方法は、金融機関や投資家からお金を借り入れる「デット・ファイナンス」と、株式を発行することで資金調達を行う「エクイティ・ファイナンス」の主に2通りがあるが、その中間形態(「メザニン・ファイナンス」)も存在し、資本性劣後ローンはその中の一つである。』

『活用の利点として、第1に、償還期限にまとめて返済を行う「期限一括償還」であることが挙げられる。事業拡大や事業再生のために一定期間の資金流出を免れない企業では、毎月の返済負担がなく、資金繰りが一時的に改善する。第2に、金利設定が業績連動型のため、拡大した事業や再生中の事業の業績が軌道に乗るまでの間、金利負担を抑えることができる。第3に、金融機関の審査の際、資本性劣後ローンが自己資本として見なされる点が挙げられる。債務超過だった企業では、一時的に財務状況が改善したものとして扱ってもらえるため、融資判断にプラスの影響があるといえる。(➡債権の劣後性)』

『資本性劣後ローンの融資条件面の特徴としては、〔1〕期限一括償還、〔2〕業績連動型の金利、〔3〕債権の劣後性、の3点が挙げられる。

期限一括償還については、期限到来時まで元本返済負担がなく、キャッシュフローの不足する業績悪化時や事業再生、新規事業の立ち上げ時などにおいて、返済負担を気にせず事業に注力することが可能になる。「新型コロナ対策資本性劣後ローン」では、感染症流行の影響の甚大さを鑑み、償還期間は従来の資本性劣後ローンの最長15年間から最長20年間の期限一括償還に拡充されている。

金利設計については、直近決算の業績に応じて決まり、業績悪化時には金利負担が抑えられ、好業績時には配当に近い考えのもと一定の金利負担が発生する。「新型コロナ対策資本性劣後ローン」では、従来の資本性劣後ローンに比べて、利益が出た際の金利も最大3%程度引下げを行っており、更に融資後3年間は利益の有無によらず、金利を低利に据え置くことで、金利負担の大幅な軽減が図られている。

債権の劣後性については、法的倒産手続において当該債権の劣後性が確保されており、無担保・無保証としている。これにより、担保がなくても資金調達が可能であり、担保がある場合は民間金融機関に担保提供することで、民間金融機関から有利な条件での資金調達ができる可能性もある。』

 

ということで、金利設定が固定金利ではなく、業績連動型の金利となっています。誤りで、これが正解です。

 

以上より、4が正解となります。