1.
今回は発明家との会話問題です。
とりあえず、会話を読んでいきましょう。
甲 氏:「私は便利な掃除用具を発明しました。われながらとても良いアイデアで
あり、特許を取ってみたいと考えています。そこで質問があります。 実はこの発明を 1 か月前に発明展に展示してしまいました。そのときはまだ特許を取るなんて全然考えていなかったので、発明展に自発的に応募して出品しました。しかし、先週になって特許を取りたいと思うようになりました。
甲氏は、最初は特許を取る気がなかった発明品を、発明展に出品して、後から特許を取得したいと考えなおしたようです。基本的には特許は公に公開されていない、新規性があるものが対象になりますので、こんなときはどうしたら良いだろうという相談になりますね。
新規性がないということで、この発明の特許を取得することは無理でしょうか。この発明展は 1 週間にわたり開催されました。一般に開放したので、老若男女問わず多くの来場者がありました。新規性を喪失しても救済される制度が特許法にあると聞きました。この制度について教えていただけないでしょうか。」
どうも、甲氏このような場合でも救済処置があることを耳にして相談したようです。
あなた:「発明の新規性喪失の例外規定ですね。[ ] 。知り合いの弁理士をご紹介しましょうか。」
新規性喪失の例外規定と言う言葉が出てきました。今回の重要キーワードです。新規性喪失の例外とはどのようなものでしょうか?
特許庁によると、以下のように定義付けされています。
「わが国の特許制度においては、特許出願より前に公開された発明は原則として特許を受けることはできません。しかし、刊行物への論文発表等によって自らの発明を公開した後に、その発明について特許出願をしても一切特許を受けることができないとすることは、発明者にとって酷な場合もあり、また、産業の発達への寄与という特許法の趣旨にもそぐわないといえます。
このことから、特許法では、特定の条件の下で発明を公開した後に特許出願した場合には、先の公開によってその発明の新規性が喪失しないものとして取り扱う規定、すなわち発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)が設けられています。」
必要な手続きとして、通常に加え、以下の手続きが必要になります。
- (1)出願と同時に、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出し、
- (2)出願から30日以内に、発明の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面を提出する、
そして、新規性喪失の例外期間1年、つまり論文発表などした後、1年間まで例外を認めますよってことですね。ただし、その前に他社が先行して出願した場合には、これは認められなくなります。ちなみに、1年というのは平成30年の改定後の話で、それ以前は半年だったようです。また、特許権だけでなく、実用新案権についても同様にこの例外が1年間認められます。
では、そのうえで設問をみていきましょう。
1.新規性を喪失した日から 1 年以内に特許出願をする必要があります。そして、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して発明が新規性を喪失した場合にも、所定の手続的要件を充足することで、この適用を受けられます
まず1年以内というのは、条件として合っていますね。
そのあとはどうでしょう「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して発明が新規性を喪失した場合」という言い回しは重要なので、頭の片隅に入れておきましょう。つまり、権利を有した人の判断、行為により何らかの形で発表された場合において、それを証明する手続きを踏むことにより、この例外を適用することができるというわけです。
「特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が新規性を喪失した場合」については、とくにそのような手続きは必要ありません。
2.新規性を喪失した日から 18 か月以内に特許出願すればこの適用を受けられます。しかし、この適用を受けられるのは、特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が新規性を喪失した場合に限られます
さて、新規性喪失の例外が適用されるのは、1年以内でしたね。すでに18か月以内という記述で、誤りであることが分かります。
その後の記載、「特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が新規性を喪失した場合」についても誤りですね。「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して発明が新規性を喪失した場合」であっても、手続きにより適用されました。
よって、誤りとなります。
3.新規性を喪失した日から 18 か月以内に特許出願をする必要があります。そして、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して発明が新規性を喪失した場合にも、所定の手続的要件を充足することで、この適用を受けられます
これも18か月なんで、すぐに誤りというのが分かりますね。
そのあとの文章は、1と同じですので合っていますが、これも誤りです。
4.新規性を喪失した日から 2 年以内に特許出願すればこの適用を受けられます。しかし、この適用を受けられるのは、特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が新規性を喪失した場合に限られます
2年以内と、まさかのさらに延長されています。後半の文章も誤りです。
これも誤りとなります。
以上より、1が正解となります。適用される期限だけで、解答は容易にできたと思います。