設問1:4.
設問2:3.
会話問題ですね。X株式会社における、吸収分割について出てきそうです。
会話をひとつひとつ分解していきましょう。
甲 氏:「弊社の事業の一部である b 事業の業績が芳しくないので、b 事業を他の会社に売って、弊社の経営資源を a 事業に集中したいと思っています。
現実にもよくあるタイプですね。白物家電部門を売ったりとか。X株式会社は、どうやらあa事業とb事業を事業をやっていて、どうやらb事業がうまくいっていないようです。これを持ち続けていても、足を引っ張っていくだけだと判断して、b事業を売ってしまって、その資金でa事業に集中したいということですね。
先日、資本関係にない株式会社であるY社から、b 事業を買いたいという話がありました。
関係するかは分かりませんが、資本関係が無い株式会社Yから、b事業を買いたいという話が来ましたと。
Y社の担当者によれば、方法としては、事業譲渡の方法と会社分割の方法があり、会社分割は吸収分割とのことでした。
事業譲渡方法と会社分割の方法があることが、Y社担当者より提示がされたわけですね。
私は、b事業を売った対価を金銭としたいと思ったのですが、事業譲渡と会社分割とでは違いが生じるのでしょうか。」
そして、事業譲渡と会社分割の違いについて、甲氏は尋ねています。ということで、事業譲渡と会社分割について、ちょっと確認しておきましょう。
まずは会社分割についてです。
会社分割(かいしゃぶんかつ)とは、企業組織再編の手法の一つで、既存の会社(分割会社)を他の既存の会社(承継会社)または新設する会社(設立会社)に分割するもの。
大陸法系諸国には同様の制度を有している国が多い。
概要
会社分割は、企業の不採算部門の切り離しや、異なる企業の同一部門をお互いに分離・統合しスケールメリットを求める場合、あるいは持株会社化などに行われ、法人の事業部門の全部又は一部を、既存法人や新設法人に移転することとなる。
会社分割の種類
吸収分割・新設分割
吸収分割とは、既存の会社が、その事業に関して有する権利・義務の全部又は一部を分割して他の既存の会社に承継させる会社分割をいう。
新設分割とは、既存の会社が、その事業に関して有する権利・義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させる会社分割をいう。
物的分割・人的分割
物的分割とは、分割会社に対して承継会社や設立会社から対価が交付される会社分割をいう。
人的分割とは、分割会社の株主や社員に対して承継会社や設立会社から対価が交付される会社分割をいう。
物的分割と人的分割の混合形態として中間型分割がある[2]。なお、分割会社が分割後に解散する消滅分割を採用している国もある[1]。
これらの会社分割の形態はすべての国に存在するわけではない。2006年(平成18年)改正前の日本の商法では物的分割も人的分割も認められていたが、2006年(平成18年)5月1日施行の会社法の会社分割制度では、物的分割のみを規定している[2]。なお、日本の会社法でも全部取得条項付種類株式の取得や剰余金の配当を組み合わせることで人的分割と同様の結果を生じさせることができる[2]。
単独分割・共同分割
単独分割とは、分割会社が一社のみである会社分割をいう[3]。共同分割とは、分割会社が二社以上によって共同で行われる会社分割をいう[3]。
交付金分割
交付金分割とは、承継会社からの分割対価として金銭のみが交付されるものをいう[3]。
三角分割
三角分割とは、承継会社からの分割対価として親会社の株式が交付されるものをいう[3]。
無対価分割
無対価分割とは、吸収分割のうち、分割会社に対して事業の全部または一部に対する金銭等が交付されないものをいう[4]。
「会社分割」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年9月8日 (木) 22:55 UTC、URL: 会社分割 - Wikipedia
分割の種類がたくさん載っていますが、とりあえずは吸収分割と新設分割を覚えましょう。
吸収分割:
イメージ的には、会社X から、その事業を切り離し、分割してあげて、そして、それを会社Yが継承して吸収するというやり方です。つまり、既存会社XとYの間における事業譲渡です。
新設分割:
これは吸収分割とは違って、新しく事業を切り離した企業Yを新設し、その企業Yがその事業を継承していく感じです。そーいやあ、SONYなんかは、ノーパソ事業をVAIO株式会社に引き継いでいましたっけ。それと同じです。
そして会話に戻って、会社分割は吸収分割になりますよってのは、この2種類のうち吸収分割になりますよってことだったわけですね。そして、事業譲渡についてです。これは事業を、ある意味商品として、別の会社へ売買するやり方です。
会社分割との違いは、会社分割は、会社法における組織再編行為として扱われるのに対して、事業譲渡はいわば売買になりますので、買い手、売り手それぞれに税金が課せられます。この手続きの違いから、様々な違いが発生してきます。
あなた:「 [ A ] 。」
ここは設問1で解説します。
甲 氏:「なるほど。その後、私が、弊社の経理部長乙氏に意見を聞いたところ、乙氏は、『これを機会にY社の株式を取得して、Y社との関係を深めてはどうか。』と話していました。b 事業を売った対価を株式とすることは、事業譲渡と会社分割のいずれでもできるのでしょうか。」
あなた:「[ B ] 。」
対価に関する質問ですね。こちらも設問1でやっていきましょう。
甲 氏:「ありがとうございます。事業譲渡によるのか、会社分割によるのかは、弊社内で再度検討します。ところで、事業譲渡と会社分割の手続きを少しお聞きしたいのですが、それぞれの手続きで違うところはあるのでしょうか。」
あなた:「[ C ] 。」
甲 氏:「分かりました。ありがとうございます。」
最後は手続きに関してです。これは、問題文から学んでいきましょう。設問2て詳しく解説します。
さて、問題文を見てみると、会社分割、事業譲渡についての対価についてが問題となっているようですね。
まず、会社分割における吸収分割において、株式を対価にするケースと、金銭等を対価とするケースに分かれます。さらに細かく吸収分割の形態によって細かくは変わってくる部分もありますが、今回は、対価が株式か金銭等かの話なので細かいところは割愛します。
事業譲渡の場合はいかがでしょうか?基本的に、金銭が用いられることが多いです。まあ、とにかく売ってしまって金銭にしたいってのがほとんどでしょうしね。しかしながら、何か制限があるかというとそうではありません。売り先の株式を金銭の代わりの対価として提示することもあり得ます。
上記より、事業譲渡と会社分割では、対価に制限はありません。どちらも金銭でも株式も大丈夫ですので、こちらの解答は4となります。
設問2です。こちらは問題文から見ていきます。
1.会社法では、事業譲渡の場合、X社の株主にいわゆる反対株主の買取請求権が認められていますが、会社分割では反対株主の買取請求権は認められていません
株式買取請求権についてです。これは株主の自益権の一つで、形成権と呼ばれます。
そして、その中の反対株主の株式買取請求権を見てみましょう。発生する場合として、事業譲渡と、吸収分割があると思います。つまり、どちらの場合においても、この株式買取請求権は発生します。よって、これは誤りです。
株式買取請求権(かぶしきかいとりせいきゅうけん)とは、株主が、(株式)発行会社に対して、自己の保有する株式の買取りを求めることができる権利をいう。
概要
日本の会社法において株式買取請求権は、(1)単元未満株式の買取りを求める場合(会社法192条)と、(2)合併などの会社の企業組織再編等の株主総会決議が行われた時に、議案に反対した株主が会社との関係を絶つために、自己の有する株式について会社に買取りを求める場合の2種類が認められている。株主の自益権の一つであり、形成権である。
- 会社法は、以下で条数のみ記載する。
単元未満株式買取請求権
単元未満株式の買取請求権が発生するのは、主として次の場合である。
- 上場会社の株式は、ほとんどが単元株制度を採用しており、それが取引単位となっている。
- 一方、長期保有株主は、株式分割のみならず、合併等といったコーポレート・アクションの際に交付された単元未満株式を保有する場合がある。
- 単元未満株式は、議決権をはじめとする共益権等が制限されており、加えて市場を通じた売買ができない。
- 株主が自由に財産の処分を行えるようにするため、発行会社に買取らせることを請求できるようにしたもの。
反対株主の株式買取請求権
反対株主の株式買取請求権が発生するのは、次の場合である。
- 発行する全部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要することついての定めを設ける定款の変更をする場合(116条1項1号)。
- ある種類の株式について、譲渡制限を定めたり全部取得条項付きとする場合(116条1項2号)。
- 種類株式を全部取得条項付きとした場合、取得の決議後に、当該種類株式について172条1項により裁判所に価格決定申立てをすることもできる。
- 種類株式の内容として、種類株主総会の決議を要しないと定められた種類株主に損害を及ぼすとき(116条1項3号)。
- 事業譲渡等(旧営業譲渡)
- 事業譲渡等をする場合には、反対株主は、事業譲渡等をする株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。ただし、事業の全部の譲渡する場合において、株主総会の承認の決議と同時に解散の決議がされたときはできない(469条1項)。
- 株式買取請求をした株主は、事業譲渡等をする株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる(469条6項)。
- 株式の価格の決定について、株主と事業譲渡等をする株式会社との間に協議が調ったときは、当該株式会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない(470条1項)。
- 株式の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる(470条2項)。
以上の場合に、株式買取請求権を行使できる「反対株主」とは、次の株主をいう。
- 株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合は、株主総会に先立って反対する旨を株式会社に対し通知し、かつ、株主総会において反対した株主と株主総会において議決権を行使することができない株主(会社法116条2項1号、469条2項1号)。
- 株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要しない場合は、すべての株主(116条2項2号、469条2項2号)。
株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる(会社法116条6項、469条6項)。
株式買取請求があった場合において、価格について協議がととのわないときは、裁判所に対して価格の決定申立てをすることができる(117条2項)。裁判所はこれを非訟事件として審理する。その裁判(決定)に対する不服申立ては即時抗告による(裁判の告知を受けた日から1週間以内にしなければならない)。172条1項による申立ての場合も同様である。
「株式買取請求権」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年6月4日 (土) 02:25 UTC、URL: 株式買取請求権 - Wikipedia
2.会社法では、事業譲渡は、登記をすることにより効力が発生するとされていますが、会社分割は、契約書に定めた効力発生日に効力が発生するとされています
効力発生日についてです。これはもう覚えておくしかないですね。
事業譲渡の場合:契約書で、効力発生日を定めることができます。登記したタイミングというわけではありません。
会社分割の場合:これは新設分割と吸収分割で異なります。
新設分割の場合:登記を実施した日
吸収分割の場合:契約書で、効力発生日を定めることができます。
というわけで、事業譲渡についての記載が誤っていますね。よって、誤りです。
3.会社法には、会社分割では、X社で契約書などの事前開示書類を一定の期間、備置することが定められていますが、事業譲渡ではそのような定めはありません
事前開示書類とは、上記にもありますが、契約情報やその他一定の情報について記録した書類のことです。会社法における組織再編行為においては、この事前開示書類を効力発生日から6か月間、備置することが定められています。
事業譲渡の場合は、取引という形態であり、組織再編行為にあたらないため、このような定めはありません。よって、この選択肢は正しいです。
4.会社法には、事業譲渡ではX社の債権者を保護するための債権者保護手続が定められていますが、会社分割ではそのような手続きは定められていません
債権者保護手続きについては、会社分割と事業譲渡の間の重要な差異です。まず債権者保護手続についてですが、これは会社法に定められている「債権者には、弁済、担保提供等を行う手続きのこと」です。主に会社の組織再編行為などにより、損失を被る場合の弁済・担保の手続きです。
下記、Wikiのケースを見ると分かるように、組織再編行為関連について、この手続きが定められていますが、事業譲渡については定められていません。よって、この線t買うしの説明は事業譲渡と、会社分割についての説明が逆になっています。よって誤りです。
債権者保護手続(さいけんしゃほごてつづき)とは、会社法において債権者に対して異議申立てができる旨を公告し異議を申立てた債権者には、弁済、担保提供等を行うことである。
概説
手続の内容
- 資本金の減少(449条)
- 官報での公告と個別催告が必要であるが、官報と日刊新聞紙の公告又は官報と電子公告とすることが出来る。
- 準備金の減少(449条)
- 資本組入れ、欠損補填の場合以外は、官報での公告と個別催告が必要であるが、官報と日刊新聞紙の公告又は官報と電子公告とすることが出来る。
- 吸収合併・新設合併(789条2,3項、799条2項、810条2,3項)
- 官報での公告と個別催告が必要であるが、官報と日刊新聞紙の公告又は官報と電子公告とすることが出来る。
- 株式交換・株式移転
- 完全子会社では、完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継する場合は、官報での公告と個別催告が必要であるが、官報と日刊新聞紙の公告又は官報と電子公告とすることが出来る。
- 完全親会社では、完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継する場合と対価の大部分が完全親会社の株式以外の財産である場合は、官報での公告と個別催告が必要であるが、官報と日刊新聞紙の公告又は官報と電子公告とすることが出来る。
- 吸収分割・新設分割(810条2,3項)
- 分割会社では、分割後に分割会社に債務の履行を請求できない債権者に対して官報での公告と不法行為によって生じた債務の債権者に対して個別催告が必要である。
- 承継会社では、官報での公告と個別催告が必要であるが、官報と日刊新聞紙の公告又は官報と電子公告とすることが出来る。
- 合名会社と合資会社の組織変更
- 官報での公告と個別催告が必要である。
「債権者保護手続」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年11月19日 (土) 13:12 UTC、URL: 債権者保護手続 - Wikipedia
以上より、解答は3です。