令和4年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第三十四問 解答と解説

解答

 

設問1:2.

設問2:4. 

 

解説

 

開発プロセスに関する問題です。様々な業界でそうですが、ニーズの多様化であったり、移り変わりの速さから、開発プロセスが変化している業界が多いです。

設問1.

 

まず設問1では、従来型の典型的開発プロセスです。従来型といっても現代においても、多くの分野において、典型的な開発プロセスといえるでしょう。しっかりとニーズを把握して、それに見合った商品開発をするやり方です。ざっと、言葉で説明していきます。

 

1.まず新製品のアイデアを出していく

まず、ニーズやシーズの観点から、どんどんアイデアを出していくところから始めます。この段階では、色んな意見をどんどん出していくことに、力を入れていきます。

2.出てきたアイデアをふるいにかける

色々アイデアが出そろったところで、アイデアをレビューし、ふるいにかけます。現実離れしたものであったり、時代に合っていないものを排除して、さらにアイデアを掛け合わせるなどして、最終的なアイデアを絞っていきます。そして、このふるいにかける手続きを、アイデア・スクリーニングといいます。

3.商品のコンセプトを決める

アイデアが固まったら、つぎはその商品がどうやって顧客に受け入れられるのかという理由づくりをします。この商品がどのようなターゲットに対して、どのような理由で購入されるのか。他社との違いは何であって、何に強みがあるのか。このようにこの商品が選び抜かれるコンセプトを決めていくわけです。

4.マーケティング戦略

商品コンセプトが決まったら、いよいよマーケティングの戦略を検討していきます。市場の特徴を調査したり、自社のポジショニングの想定など分析を行い、その分析結果により、マーケティング戦略を考えていきます。

5.事業性の分析

戦略が決まったら、実際の売り上げ計画を立てていきます。実際に生産していった場合の原価予想なども交えて、利益率の想定を行い、事業化が可能か最終的な判断をしていきます。

6.製品化に向けた試作品作成

製品化に先駆けて、プロトタイプを作成してみます。原価などの想定が正しいかのチェックもこのときされていくはずです。

7.市場テスト

プロトタイプの準備ができたら、市場にてテストをして、最終的な調整を行っていきます。

8.市場導入

市場テストでのフィードバックを経ていよいよ市場導入に移ります。

 

さて、以上を考えて、選択肢を見ていくと、2が当てはまりそうです。2が正解になります。

 

設問2.

 

 さて、設問2では新しい開発プロセスについてです。流行が加速化する昨今です。時間をかけてニーズを追い求めていると、その間に変化して、導入するころには時代遅れということさえあります。

こちらの問題は、選択肢の文章から学習していきましょう。

 

1.開発プロセスに社外の資源を求める動きが加速している中、従業員や研究機関、他の企業だけでなく、顧客を含む不特定多数の人々にまで広く分散して製品開発のプロセスに関わってもらう方法はユーザーイノベーションと呼ばれている。

とりあえずは、「ユーザ」って言っているのに、不特定多数というのはちょっとおかしいなって違和感が出ますね。まずは意味を見てみましょう。

 

ユーザーイノベーション 

ユーザーイノベーションUser innovation)とは、マサチューセッツ工科大学エリック・フォン・ヒッペル教授が提唱するユーザーが行うイノベーションのこと(関連する概念にクラウドソーシングがあるがこちらはメーカーとユーザーとの共同開発に焦点がある点で厳密にはユーザーイノベーションには分類されない)。

従来はイノベーションは企業の研究所や一部の発明家などによって生み出されているとされていたが、ヒッペルはむしろ使い手であるユーザーが、目的を達成するためにイノベーションを起こすことの方が多く発生しているという説を唱えている。3Mプロクター・アンド・ギャンブル、LEGO等がユーザーを開発過程から巻き込む試みを続けていることで有名。

 国内研究者では、神戸大学小川進が日本におけるユーザーイノベーション研究の父であり、von Hippelを中心として選出されているOpen and User Innovation 研究を行う主要研究者コミュニティ(Village Elders)の中でただ一人、日本人メンバーである。小川はフォン・ヒッペルの指導のもとMITからユーザーイノベーションの研究で経営学博士を取得しており、フォン・ヒッペルとユーザーイノベーションについての研究論文を発表している(フォン・ヒッペルと共著論文がある日本人は小川だけ)。著書『イノベーションの発生論理』(千倉書房)、『稼ぐ仕組み』(日本経済新聞社)、『競争的共創論』(白桃書房)、『QRコードの奇跡』(東洋経済新報社)で日本における事例をまとめているが『ユーザーイノベーション』(東洋経済新報社)がこの分野について最も包括的に紹介、議論しており、日本語で書かれた唯一の教科書あるいはバイブル的存在と言える。ユーザーイノベーションで起こる現象を絵本的動画で表現した「ユーザーイノベーションストーリー」がYouTubeで公開されており、特に英語版(A tale of user innovation)は非常に多くの回数、再生されている。 他の国内研究者には濱岡豊(慶應義塾大学)、鷲田祐一(一橋大学)、山下裕子(一橋大学)、勝又壮太郎(大阪大学)、小路武安(東北大学)、水野学(日本大学)、廣田章光(近畿大学)、清水信行(流通科学大学)、田中克昌(日本経済大学)、西川英彦(法政大学)、堀口悟史(神戸大学大学院)、東史恵(嘉悦大学)、本條晴一郎(静岡大学)、加藤智之(KO4lab)、伊藤公佑(名古屋工業大学)、越島一郎(名古屋工業大学)、山城慶晃(東京大学)、秋元創太(東京大学)、大原悟務(同志社大学)、米山茂美(学習院大学)らがいる。

 国内の実施事例としては、エレファントデザインの空想生活、エンジンのたのみこむなどの第三者的なサービスを提供するケースと、デンソーウェーブのQRコード、無印良品のネットコミュニティ、クリプトン・フューチャー・メディアの初音ミク、カモ井加工紙のマスキングテープなどの事例が成功例として知られる。

 

「ユーザーイノベーション」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年10月5日 (水) 07:46 UTC、

URL: ユーザーイノベーション - Wikipedia

 

従来は、研究所の研究の中で、そのようなイノベーションは起こるものという考えであったのだけど、実際に使うユーザから、発生するイノベーションも馬鹿にはできないし、これを利用することによって、ユーザのその製品へのロイヤルティが向上したり、そもそもで研究費用、期間が削減が期待できるよねって話です。

Youtubeとかは、見ている視聴者の反応を見て、そのコンテンツを進化させていったりしますので、あれも一種のユーザイノベーションかなと思います。さて、問題文を再度見ます。他社から不特定多数の人間までがかかわるというところで、ユーザイノベーションとは違いますね。誤りです。

 

2.顧客の移り変わりと競争が激しい市場においては、企画、開発、マーケティング、財務、生産などの各段階を一つ一つ着実に完了させてから次の部門へ引き継いでいくというプロセスによって、製品の失敗や売り上げの機会損失を少なくすることができる。

これは常識的なところにはなってしまいますが、一つ一つを着実に完了させていっては、流行についていけないという話であり、このやりかたはまさに従来の手法ですね。新しいやり方についてはいろいろありますが、各プロセスを同時並行に進めるやり方により、臨機応変に流行の変化、多様化に対応するのが一般的です。よって、誤りです。 

 

3.他の組織と共同で製品開発を進める場合、自らの組織が有する技術やノウハウと他の組織が有する技術やノウハウとの補完性や適合性が重要視されるため、開発プロセスはシーズ志向よりもニーズ志向が重んじられる。

 シーズとニーズの意味が分かれば、簡単に判断できそうな話です。

シーズ志向とは、自社の強みを生かし、そこに重点を置いた製品開発です。ニーズ志向とはそのままで顧客の要望に重点置いた製品開発です。さて、ほかの組織がと共同開発する場合、それぞれが持つ強みをかけあわせて、補完性・適合性を重要視してやっていくことが重要です。つまりは、シーズ志向ですね。よって、誤りです。

 

4.多様な部門のメンバーが 1 つのチームを形成して、製品開発における複数のステップを同時に進める場合、さまざまな部門のメンバーがプロセスの全段階に同時進行で関わるため、従来型の典型的な開発に比べて、組織に緊張やコンフリクトが生じやすくなる。

 上の方で、新しいプロセスの潮流は、各プロセスを同時並行で動かし、多様性や流行の変化に対応していくものだと説明しました。そのため、各段階の遅延が、次の作業に影響を及ぼしたりするため、緊張感は高まり、そのようなリソースの取り合いなどが発生しやすくなります。これが正解です。

 

以上より、4が正解です。