令和4年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第三十一問 解答と解説

解答

 

1.

 

解説

まずは、リレーションシップ・マーケティングの用語を調べましょう。

リレーションシップ・マーケティング 

1990年代に発展したマーケティングの一手法である。

概要

企業と顧客との間に築かれる関係性に着目し、顧客との継続的で長期な取引関係の構築と維持を目指して展開されるマーケティングである。1980年代に提唱され、1990年代以降、学術的研究において大きく発展した。1983年にL.L.Berryが最初に提唱したとされる。

日本では、「関係性マーケティング」と訳し、使用する一部の学派があるが、一般的には「リレーションシップ・マーケティング」が多く使用されている。

北欧および英国のビジネス・マーケティングの研究者のグループであるIMP(Industrial Marketing and Purchasing Group)や北欧学派(Nordic School)では、リレーションシップネットワークについての研究が続けられている。代表的な学者にエバート・グメソン(Evert Gummesson)やクリスチャン・グレンルースなどがいる。

発展背景

*従来のマーケティングはアメリカ合衆国の広大な国土と多数の人口を暗に前提としていたのに対して、北欧のマーケティング研究者が、限られた国土と人口を自覚し、新規の顧客獲得よりも既存顧客との関係を深耕し、市場機会を見出す見方を提唱し、多くの国々でもこの認識が、人口の成長の止まった先進国の研究者間で支持されるに至った。

  • 新規顧客の創造と同時に、既存顧客を維持することの重要性が高まり、かつ情報技術利用の容易化・低廉化によって顧客管理が企業によって可能となったこと。
  • 経済低成長時代においては新規顧客の発見・獲得が困難、あるいはコストのかかることとなったため、既存顧客をリピーターとして維持したり、他のマーケティング提案をその顧客に行うことが、マーケティング活動として効果的・効率的となったこと。

 

「リレーションシップ・マーケティング」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年10月30日 (日) 09:30 UTC、URL: リレーションシップ・マーケティング - Wikipedia

 

 リレーションシップ・マーケティングが、マーケティングの一手法というのは分かったけど、リレーション:関連性?のマーケティング?いまいち、Wikiを読んでもすっと入ってこないですね。しかし、企業と顧客の間の関係性に着目したマーケティングであるらしいということは分かりましたね。

企業と顧客の間の関係性といっても、難しく考える必要はありません。企業が大変なのは、新規顧客を開拓する労力です。広告を行い、最初は浸透価格を設定するなど、その労力の高さは想像に容易いでしょう。

顧客との関係性が良好である場合、当然顧客はその企業に対して、リピートします。顧客がリピートして、リピート率が上がっていけば、わざわざ新規顧客を獲得する労力をかける必要はなくなります。顧客の

さらに、顧客が企業のいわばファンになってくれれば、他の製品も買ってくれる可能性は高くなっていきます。客単価は高まっていきます。

そして、ファンになった顧客は、口コミで良い情報を拡散してくれます。顧客がさらに自動的に新しい顧客を作り出してくれるのです。昨今はSNSなどにより、このような情報の拡散は費用をかけることなく、可能になりました。もちろん制御できないため、炎上するリスクも秘めていることは注意しなければいけません。

次に、具体的な手法についてです。リレーションシップマーケティングを進めるために、代表的な手法として、以下の3つの手法があります。いろいろありますが、とりあえずこの3つ覚えると良いでしょう。

  1. データベースマーケティング
  2. アカウントベースドマーケティング
  3. OnetoOneマーケティング

 データベースマーケティング

常連顧客の購買履歴、顧客情報などから、顧客の傾向や趣向など分析して、それに合わせたアプローチをとる手法です。

 アカウントベースドマーケティング

 アカウントベースドというのは、いわばBtoB企業におけるアプローチ手法です。すべての顧客相手にするのではなく、最大売り上げ効率を考えて、ターゲットを絞り、その範囲となるアカウントを定めます。そして絞り込んだターゲットに、組織的なアプローチをかけて、効率的な戦略を立てるやり方です。

OnetoOneマーケティング

 その名の通り、ひとりひとりに対して、最適な戦略を適用するやり方です。具体的には、データベースマーケティングとやり方は近く、amazonなどでみられるような、あなたにお勧めの書籍などの表示とかが、それに当たります。

 

さて、問題文に移りましょう。

 

1.パレートの法則とは、売上げの 80 %が上位 20 %の顧客によってもたらされるとする経験則であり、上位 20 %の顧客を重視することの根拠となるが、この法則が当てはまらない業界もある。

いきなり、とても重要なパレートの法則が出てきました。

パレートの法則 

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した冪乗則。経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているとした。80:20の法則、ばらつきの法則とも呼ばれる。

概要[編集]

パレートは所得統計を分析して、所得分布が安定的であり、時代によって変化しないという結論を出した。この結論からは、社会の所得格差は平等にならないが、不平等も強化されないことになる。パレートの法則は、関数のパラメータ(パレート指数)によって所得分布を時間・空間的に比較したもので、貧困についての最初の数学的な研究ともいわれている

しかし、パレートが発表した当時から難点があった。パレートの法則は低所得層に当てはまらないという問題があり、パレート自身も認めていた。パレートが用いた統計はイタリアやスイスのいくつかの都市と、プロイセン王国ザクセン王国の税務表だったが、資料の期間は1880年から1890年であり、長期的な格差の確認には向かなかった。また、データには格差の拡大傾向も存在していたが、パレートは採用しなかった

パレートの法則は1900年代に批判された。経済学者・統計学者のコスタンチーノ・ブレシアーニ英語版は、都市部や人口密集地では所得格差は一定ではなく拡大すると論じた。統計学者のコッラド・ジニは、所得分布の集中を計測するには人数と所得総額のデータが必要だとして、パレートの法則が妥当ではないと論じた[注釈 2][6]。パレートの批判的継承者であるジニは、のちにローレンツ曲線をもとに所得分布の指標としてジニ係数を考案した[注釈 3][6]

現在は、所得分布についてのパレートの法則は局所的にのみ有効であるとされている[4]

 パレートの法則は、働きアリの法則と同じ意味合いで使用されることが多く、組織全体の2割程の要人が大部分の利益をもたらしており、そしてその2割の要人が間引かれると、残り8割の中の2割がまた大部分の利益をもたらすようになるというものである。経済以外にも自然現象社会現象など、さまざまな事例に当てはめられることが多い。

 

「パレートの法則」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年12月23日 (金) 21:19 UTC、URL: パレートの法則 - Wikipedia

 

Wikiにも書いているように、80:20の法則とも言われています。そっちで名前聞いたことある人も多いんではないですかね。

つまりは、8割の利益は、2割の顧客によりもたらされるんで、その2割をいかに大事にするかって話ですね。しかし、この比率が全てに当てはまるわけではありません。所得格差があるような地域、または特定の業界によっては、この比率は成り立たない場合があります。よって、問題文は正しいです。

 

2.リレーションシップ・マーケティングにおいて優良顧客を識別するために用いられる方法の 1 つに RFM 分析があり、それぞれの顧客が定価で購買している程度(Regularity)、購買頻度(Frequency)、支払っている金額の程度(Monetary)が分析される。

今回は、とても重要な用語が多いです。RFM分析は、顧客の購買履歴データベースを用いた手法です。問題文の頭文字に誤りがあります。RはRegularityではなく、Recencyです。一番最近に購入した月日です。その他は合っています。よって誤りです。

 

3.リレーションシップには、さまざまな段階がある。ある消費者がブランドを利用した結果としての経験を他者に広めているかどうかは、実際には悪評を広めるリスクもあるため、リレーションシップの段階を判断する手がかりとしては用いられない。

これは、リレーションシップ・マーケティングの少し深い知識がないと、解答しにくいのではないでしょうか。ただ、知識なく考えても、他社に口コミを広めるかどうかというのは、やはり関係性判断の手がかりとして、有効な尺度になることは想像つくと思います。良好な関係を気づく指針が、リレーションシップ・マーケティングの基本ですが、悪評もまた関係性のひとつとなります。よって誤りです。が、これはスルーでもいいかもしれません。

 

4.リレーションシップの概念は、B to C マーケティングにおいて企業が顧客と長期継続的な関係の構築を重要視するようになったために提唱され始めた。これに対して B to B マーケティングにおいては、企業間の取引は業界構造や慣行に大きく影響されるため、リレーションシップの概念は当てはまらない。

 そんなことはありませんね。BtoBの関係性に着目したリレーションシップマーケティング手法もあることは、前述しました。誤りです。

 

以上より、1が正解になります。