令和4年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第三十問 解答と解説

解答

 

2.

 

解説

流通チャネルに関してです。用語の理解も必要ですが、単純な知識というよりは、実際に内容をよく理解していないと、判断がしにくい問題になっていると思います。

そもそも流通チャネルってなんだ?これは、ある商品がメーカーから、消費者の手元に届くまでの流通経路のことです。そんなもんかと言いながらも、ここには様々な戦略が存在します。

まず流通チャネルには、「長さ」と「幅」という概念があります。「長さ」とは、メーカーが出荷して、ある問屋を経由して、さらに小売業者に渡って、そして消費者に渡る。あるいは直販で、メーカーから一気に消費者に渡る場合も考えられます。この場合、後者は前者に比較して、流通チャネルの「長さ」は短いとなります。

では、「幅」とはどういったものでしょうか。ある限定生産の日本酒は、決められた酒屋さんにだけ製品を卸しています。対して、缶ビールは、居酒屋にも、コンビニにも、スーパーでも販売しており、多くの流通チャネルを利用しています。この場合に、後者は前者よりも、流通チャネルの「幅」が広いと言えます。

ここでチャネルの尺度として3つの基準があります。

  1. 広狭基準:流通業者の数であり、販売業者のバリエーションとも言えます。
  2. 長短基準:消費者までに経由する業者の数です。
  3. 開閉基準:これが一番分かりにくい基準ですが、流通業者との依存度です。限定的になればなるほど、流通業者とは密度が高く依存した状態と言えます。

基本的な、流通チャネルの概念はOKですね。次にその戦略として、大きく3つあります。3つあると言っても、考え方はとっても簡単。広く売っていく、限定的に売っていく、そしてその中間くらいの売り方、です。それぞれ以下のように呼ばれます。

  1. 開放的チャネル政策
  2. 排他的チャネル政策
  3. 選択的チャネル政策

 

開放的チャネル

まず、開放的チャネル選択、広く売っていく場合です。広く売っていくのは、日用品など最寄品などがこの政策をとることが多いです。コンビニ、スーパーなどいろんなところに売っていることが利点で、値段が上がり下がりが比較的少ないものですね。そのようなものは、商品が知れ渡っていて、どのチャネルで売り出しても、売れていくので企業は広くものを出そうとし、様々なチャネルを利用する戦略を取ります。

基本的には利益が小さく、安価なものがこのチャネルを利用して売られる傾向が強いです。チャネルが多くなり、企業側がチャネルをコントロールすることが難しくなり、時期を間違えると、多くの在庫が残る危険性があります。

 

排他的チャネル政策

排他的チャネル政策は、開放的チャネルとは真逆で、閉鎖的なチャネルです。流通業者を限定的にして、チャネルのコントロールをしやすくして、無駄に商品を販売することはしません。

メーカー側のチャネルの支配力は強くなり、販促など、意見が強くなる傾向があります。販売数などのコントロールもしやすくなり、売れ残りなどのリスクは比較的少なくなります。また、流通を絞り、安易な露出を少なくすることにより、高級ブランドのような貴重性を強調し、高級感を演出することもできます。

ただし、流通を絞ることにより、販売機会を逃す可能性も出てくるので、日用品など、どこでも売れるようなものは、この政策は向きません。

 

選択的チャネル政策

化粧品とか、電化製品など、ある程度ジャンルが決まった商品について、販売チャネルをそのジャンルに特化した流通先に限定するやり方です。電化製品なら、ヨドバシとかビックカメラとか、化粧品とかはデパート1階とか、薬屋さんとかです。

ある程度限定することにより、開放的チャネル政策と排他的チャネル政策のいいとこどりを狙った政策になります。ジャンルを絞ることにより、そのジャンルの販売傾向などは、こまめにコントロールが可能になり、かつ、販売店側にある程度の自由度を持たせることにより、販売機会を逃さないようにすることが可能です。

 

と、前置きは、ここまでとして、問題文へ進みましょう。

 

1.流通チャネルの開閉基準とは、メーカーが取引をする各流通業者にどれだけの数の商品を卸すかの尺度であり、当該地域におけるメーカーの出荷総額に占める卸・小売の販売シェアを意味する。

「開閉基準とは、メーカーが取引をする各流通業者にどれだけの数の商品を卸すかの尺度であり、当該地域におけるメーカーの出荷総額に占める卸・小売の販売シェアを意味」 この時点で、これは開閉基準ではないなということが分かりますね。シェア数を示す基準ではなく、チャネルの依存度です。ただ、少しまどわされるニュアンスがありますので、しっかりと見極める必要があります。この文章は、誤りです。

 

2.流通チャネルの広狭基準とは、メーカーが特定地域内においてどれだけの数の小売企業を通じて自社の商品を販売するかの尺度であり、開放的流通、選択的流通、排他的流通に分けるために用いられる。

「広狭基準とは、メーカーが特定地域内においてどれだけの数の小売企業を通じて自社の商品を販売するかの尺度」その通りですね。どれだけ広く販売するのかという基準です。そして、これを基準にして、3つの政策は分類されます。これが正解です。

 

3.流通チャネルの長短基準とは、物流ルートの時間的・物理的長さに関する尺度であり、輸送と保管の機能を含めたロジスティクス全体の物流効率を考慮する際に用いられる。

「長短基準とは、物流ルートの時間的・物理的長さに関する尺度」、これは違いますね。物理的な長さではなく、経由する業者の数です。よって、誤りです。

 

4.流通チャネルの付加価値基準とは、卸段階と小売段階においてどれだけの付加価値が生み出されているかに関する尺度であり、卸段階と小売段階の販売額の比率として算出される。

これは、んんん?ってなるかもしれません。そもそも付加価値基準なんてものは、無いので、そこではじければ良いですが、考え込むと泥沼です。卸段階と小売段階の販売額の比率が、大きいということは、多くの業者が消費者に届くまでに経由したということになります。この比率は、長短基準のひとつであり、付加価値基準ではありません。よって、誤りです。

 

以上より、2が解答です。

2が明確に正解なので、迷うことはないと思いますが、4で悩んでしまい判断に時間がかかることがあるかもしれません。