設問1:1.
設問2:5.
こういった、シチュエーション問題は1問は毎年出ていると思います。特に時事問題を意識したシチュエーション問題が出る傾向が強いです。今回はコロナの影響を受ける、衣料ブランドですね。ただ、だいたいの場合、時事問題自体は特に問題を解くうえでは関係なく解けることが多いです。
本問題は、いわゆる価格の決め方についてです。価格戦略と言ってよいと思います。特に、人気のある衣料ブランドです。しかし、コロナの影響で価格の見直しが必要かもしれないと判断しています。そのため価格戦略といっても、ブランド・ロイヤルティなど、ブランドに対して消費者が持っている価値が、価格に影響します。よって、ブランドの価値を高めていくことも重要ですが、実際の消費者が持っているそのブランド価値を測定することも重要な価格戦略になっていきます。
では、ブランド・ロイヤルティってなんでしょう。ざっくりは、そのブランドのファンと言ってよいです。その度合いの強さにより、是が非でもそのブランドで揃えたいというくらい強いロイヤリティを持っているファンもいるでしょう。つまり、ブランド・ロイヤリティが高いと、高い価格であっても、その商品を得たいと思うひとが増えるということです。
設問1から見ていきましょう。
1.同じ製品でも、その製造プロセスなどに消費者を巻き込んでいくことを通じて、より高い価値を感じてもらうことが可能である。この場合、結果としてより高い価格で買ってもらうこと以外に、価格を据え置くことによって、より高い顧客満足を感じてもらうという選択肢もある。
ちょっと判断に困るところはあるのですが、ブランド・ロイヤリティを高めるためには、まずは消費者のニーズを把握すること、製造プロセスにおいて、消費者のニーズを取り入れそれを反映することで、消費者はそれならこの価格でも買おうということになります。また、コミュニティサイトを作るなどして、そのブランドの愛用者のコミュニティ内におけるディスカッションから、要望を取り入れていくことで、よりブランドへの愛着やある種の仲間意識が生まれ、ロイヤリティは高まっていきます。ということで、まず前半は合っています。
後半が判断が難しい。「結果としてより高い価格で買ってもらうこと以外に、価格を据え置くことによって、より高い顧客満足を感じてもらう」、言葉だけ読むと、より高い価値を感じてもらっているはずだから、価格を据え置くと、顧客満足度は上がるよねって読めます。「ブランドの愛用者からの要望を聞いて、完全限定生産で販売します。限定的な生産なので、価格を上げたいところですが、なんと据え置きです。」ってことですかね。話の流れが、相場より高くても、ロイヤリティが高いから満足してくれる方向だと思って読んでいると、違和感が出てしまうんですよね。保留でもいいのかもしれませんが、結論を言うと、これが正解です。「矛盾は無いが、決めきれない選択肢を見つけたら、他が明らかに誤りの可能性」のパターンを意識して次を読んでいきましょう。
2.消費者が価格に対して感じる意味とは「支出の痛み」であるから、価格が下がれば支出の痛みは和らぎ、価格が上がれば支出の痛みは強くなる。このため日用品の分野では、通常は価格を上げれば売り上げは低下する。このような財は「ギッフェン財」と呼ばれる。
「消費者が価格に対して感じる意味とは「支出の痛み」であるから、価格が下がれば支出の痛みは和らぎ、価格が上がれば支出の痛みは強くなる。」までは、よさそうですよね。
「このため日用品の分野では、通常は価格を上げれば売り上げは低下する。このような財は「ギッフェン財」と呼ばれる。」
これは、違いますね。まず日用品は、価格の変動による売り上げが受けにくいものです。なぜなら必須用品なので、買わないわけにはいかないためです。
また、ギッフェン財についても違います。
収入の少ない家計がより多く必要とする劣等財であるために、価格の上昇に対して需要量が増加する財、または価格の下落に対して需要量が減少する財のこと。イギリスの経済学者、ロバート・ギッフェンが発見したことからこの名がある。ギッフェン・パラドックスともいう。
現実にギッフェン財が存在するのかどうかは長く議論が続いており、はっきりとした結論は出ていない。19世紀半ばにアイルランドでジャガイモ飢饉が発生した際のジャガイモがギッフェン財ではないかという主張がされている。
理論[編集]
通常価格低下により、正常財は財の需要が増大する。これは、価格低下により実質所得が増大し商品の需要が増大する所得効果と、相対価格低下により代替的に需要が増大する代替効果が働くためである。これに対し、劣等財においては、価格低下により実質所得が増大し商品の需要が減少する所得効果と、相対価格低下により代替的に需要が増加する代替効果が働く。
ギッフェン財は劣等財のうち、所得効果が代替効果よりも大きい財を指し、価格低下により需要が低下する。
「ギッフェン財」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年8月30日 (火) 07:41 UTC、URL: ギッフェン財 - Wikipedia
というように、ギッフェン財とは価格が上がれば上がるほど、需要が増えて、下がれば下がるほど、需要が減るようなやつです。高級ブランド製品とかが、これに当たります。100均で売っているロイヤルコペンハーゲンとかは、なんかパチモン感あって、誰も買わないってことですね。(・・・いや、意外と買いたい。)
というわけで、これは誤りです。
3.消費者が製品が提供する価値に対して支払ってもよいと感じる価格は状況によって異なることがあるが、一物一価の原則により、同一製品に異なる価格をつけることは禁止されている。
同一製品に異なる価格をつけることが禁止されているって、そんなはずはないですよね。よくチェーン店とかは、同じ製品でも、地域により値段が異なったりしてます。すでに誤りですが、一物一価の原則はせっかくなので覚えておきましょう。
一物一価の法則(いちぶついっかのほうそく、英: law of one price)とは、経済学における概念で、「自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格である」が成り立つという経験則。
概要[編集]
自由闊達で障壁のない市場において、誰もが価格を統制することができない(プライステイカー:価格受容者である)ような場合、取引数量と取引価格は均衡点で約定されるというのが、アダム・スミス以来の古典派経済理論における重要な命題である。しかしアダム・スミス自身が国富論で論じているように現実の経済はこのような理想的な自由競争が行われているわけではなく、これは古典派経済学を理論的に精緻化していく上での一つの障害であった。
すべての参加者がプライステイカーである場合、同一の市場においては、同じ品質の商品(財の同質性)が異なる価格で取引されることはない。もし異なる価格で売られていることが消費者に知られている(完全情報)ならば、その場合には、その時点において最も低い価格の商品が購入されることになるからである。ただし、これは経験則であるので、常に成り立つという訳ではない。
これに対して、別々の市場において同じ商品が異なる価格で取引されている場合、裁定取引によって両者の価格差が収斂(市場が接続)することで一物一価が成立する。
逆説的であるが、常に同一の価格が成立するところを同一の市場と呼んでも差し支えない。
「一物一価の法則」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年10月24日 (月) 10:41 UTC、URL: 一物一価の法則 - Wikipedia
つまり完全競争が成り立つ、同一の市場においては、同一で同質な商品は、同じ価格になっちゃうよってことですね。
4.消費者が製品の品質を判断するために用いる情報はブランドではなく価格である。このため、どのような価格を設定するかは、消費者の品質判断に強い影響を及ぼす。
ブランド・ロイヤルティの話が完全に無視されてしまっていますね。ブランドは、いわば信頼の証でもあります。あそこのブランドなら大丈夫という、安定した品質の安心感です。よって、これは誤りです。
5.プレステージ性が高いラグジュアリー・ブランドでは、価格が上がることによって、より高い価値を感じる消費者もいる。この理由は、プロスペクト理論によって説明することができる。
「価格が上がることによって、より高い価値を感じる消費者もいる。」これは、ギッフェン財のことで、これは正しいでしょう。さて、そのあとです。「この理由は、プロスペクト理論によって説明することができる。」。プロスペクト理論ってなんだ!?ってなった人多いのではないでしょうか。最後の最後に、明らかにこの用語を知らないと答えられないようなのが来ました。ただ、プロスペクトって意味を知っていればなんとなく解答はできそうです。プロスペクトは、「見込み」とかですので、なんか違うなって想像はつきます。Wikiを見ましょう。
不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。
行動経済学における代表的な成果としてよく知られている。
期待効用仮説に対して、心理学に基づく現実的な理論として、1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって展開された。カーネマンは2002年、ノーベル経済学賞を受賞している。
概要
プロスペクト理論は、たとえばファイナンスにおける意思決定などにおいて、人々が既知の確率を伴う選択肢の間でどのように意思決定をするかを記述する。期待効用理論のアノマリーを克服する理論として作成された。「プロスペクト(prospect)」という語は「期待、予想、見通し」といった意味を持ち、その元々の由来は宝くじである。期待効用理論の「期待(expectation)」という語に替わるものとして名前に選ばれた。
行動経済学における最も代表的な理論の一つとして知られており、そのモデルは記述的(descriptive)である。規範的(canonical)モデルと異なり、最適解を求めることよりも、現実の選択がどのように行われているかをモデル化することを目指すものである。個人が損失と利得をどのように評価するのかを、実験などで観察された経験的事実から出発して記述する理論である。
プロスペクト理論では、二種類の認知バイアスを取り入れている。
一つは、「確率に対する人の反応が線形でない」というものである。これは、期待効用理論のアノマリーで「アレのパラドクス」としてよく知られている。もう一つは、「人は富そのものでなく、富の変化量から効用を得る」というものである。これと同様のことを、ハリー・マーコウィッツは1952年に指摘している。
「プロスペクト理論」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年10月24日 (月) 10:41 UTC、URL: プロスペクト理論 - Wikipedia
ざっくり言うと、いくつか選択肢があったとき、損失を予測し、なるべくそれを回避する方を選ぶってことでしょうか。よって、誤りです。
解答は1です。
設問2は価格についてです。こちらも、問題文を読んでいきましょう。
1.企業が製品につける価格を通じて消費者にメッセージを送ることを、価格シグナリングと呼ぶ。例えば、実際には低品質なのに高価格をつけることにより高品質であるように見せることは価格シグナリングに含まれるが、製品にセール価格をつけることは価格シグナリングではない。
まず、価格シグナリングという用語が出てきています。顧客が、その製品について情報が持っていない場合に、価格は最も分かりやすい指標です。特に、似た商品が並んでいる場合、高いものが高品質、安いものは低品質と想像をするはずです。
ブランドなんかは、下手に安くせず、ブランドに傷をつけないようにあえて高く設定していきますが、それも、信頼や品質を顧客にアピールするために価格を上げてきます。こことは関係ありませんが、そのような価格を名声価格(または威光価格)と言います。
その他、末尾が9や8で終わる価格はよくあると思います。あるいは桁があがらないように、998円とか。こういうのは、なるべくお安くしていますよ!っていうシグナルになっていて、これも価格シグナリングです。このような価格を端数価格と呼びます。
また、セール表示、これも普段より良いものが安くなっていますっていう、まさに価格シグナリングですね。
ということで、この選択肢は誤りです。
2.消費者が特定の製品に関して感じる価格幅の中間値を留保価格と呼び、企業は自社のそれぞれの製品の留保価格を考慮して実際の価格を設定することが望ましい。
留保価格の用語の説明がすでに誤っています。留保価格とは、その製品に対して、払ってもよいと考える最高価格であり、中間値ではありません。よって、誤りです。
3.浸透価格とは、一般的には一気に市場シェアを獲得するためにつけられる低価格を指し、市場シェアを獲得するためには、慢性的に赤字を出すほどの低価格をつける。
浸透価格の前半の説明は正しいです。市場シェアを伸ばすために、しばらくの間設定する低価格のことです。ラーメン屋さんが新規にオープンして、最初の1週間は500円のワンコインとか、それに当たりますかね。しかし、後半で、慢性的に赤字を出すというのは誤りです。そのまま赤字を出していたらラーメン屋さんはつぶれます。それを取り返していかなければいけません。よって誤りです。
4.別々の製品をセットにして、個々の製品の合計価格より安く販売する価格アンバンドリングでは、セットで販売される製品の間に互換性があるほど、消費者のお買い得感が増す。
これは、価格バンドリングの説明ですね。バンドってまあセット、組み合わせるというような意味合いであり、それにアンがついて、反対の意味だろうなーってのは、用語をしらなくても分かるでしょう。アンバンドリングは、顧客のニーズに合わせた組み合わせができるように、あえてバラバラに売る戦略です。パソコンの構成をすきに組み合わせるパソコンメーカーがよくありますね。たいしてバンドリングは、Officeをつけるなら、この価格ねっていうように、何かをつけると安くなるよっていう商法です。よって、これは誤りです。
5.本体と消耗品を組み合わせて使用する製品で、本体を低価格で、消耗品を高価格で販売することをキャプティブ・プライシングと呼ぶ。本体を低価格で販売することによる赤字を回収するためとはいえ、消耗品の価格を高く設定しすぎることは通常避ける必要がある。
これが正解になります。キャプティブ・プライシングとは本体をまずは低価格帯で買わせて、その付属品を定期的に高価格で買わせる商法です。PS5とか、本体価格は安く、ソフトはそこそこのお値段だったりしますが、それもこれにあたりそうです。
ウォーターサーバーなんかもこれですよね。無料だけど、水自体はしっかりお金をとっていく。しかし、あまりにも高く設定しすぎると、顧客からの不満がつのり、評判がすごく悪くなるのは火を見るよりも明らかです。下手すると、本体無料で押し付けられたみたいなレッテルを張られたり、悪評が広がりかねないので、避ける必要はあります。よって、これが正解です。