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超頻出問題の、「経営組織の形態と構造」です。必ず点数を取りたいところです。それぞれの組織形態の特徴を、単純な言葉の意味としてではなく、それぞれのメリット・デメリットなど、イメージで覚えるようにしておきましょう。
まず、組織形態は大きくは、3つの基本形態があります。これをしっかりと覚えましょう。
- 事業部制組織
事業部とは、例えば地域、北海道事業とか、または製品:家電部門とか、PC部門とか、事業として成り立つ単位、それだけで会社ができてしまうような単位で、会社を分割する組織形態です。まさに下に、小さな会社がいるようなものなので、権限を下の事業部ごとに委譲することにより、管理をしやすくすることができます。一方で、例えば各部門ごとに、冗長な組織ができてしまうケースがあります。各事業部それぞれに、開発部門があったり、販売部門があったりするため、無駄なリソースを持ってしまう場合がデメリットとなります - 職能部門別組織(機能別組織)
職能部門別(または機能別とも言われます)組織は、ソフト開発とか総務とか、そういった、機能ごとにまとめられます。このような組織形態は、担当が専門職となり、知識や経験、ノウハウがそこへ集中するため、無駄なリソースを配置することが無くなります。知識やノウハウも集約するため、効率的な作業が期待できます。一方で、各部門では、事業の方針を考えることはできませんので、トップダウンでそれらは決まることが多いです。そのため、調整などに時間がかかり、判断が遅くなってしまうことがあります。また、その部門では、専門性を高めるために、他のことを一切やらないことから、各メンバーが事業を意識したりすることも無くなってしまい、広い視野による考えができない組織になりがちです。そのような環境では新しいイノベーションなどが起こりにくくなります。 - マトリックス組織
マトリックス組織では、組織をマトリックス上に考え、例えば横に機能別、縦に事業別に区画していきます。つまり2つの属性を組織に持たせて、職能部門別組織と事業部制組織の良いとこどりをしようというのが、この組織体系です。機能別組織内においても、人員をうまくやりくりしやすくなり、効率性も維持することが期待できます。範囲の経済において有利になるとも言えます。ただし、管理が複雑になるため管理者の負担が増大します。作業者は機能別組織の上長と、事業部制組織の上長といった二人の上長が存在し、板挟みにあうこともあります。
では、選択肢を見ていきましょう。
1.事業部制組織では事業部ごとに製品-市場分野が異なるので、事業部を共通の基準で評価することが困難なため、トップマネジメントの調整負担が職能部門別組織に比べて大きくなる。
まず、前半部分「事業部ごとに製品-市場分野が異なる」は合っていますね。「事業部を共通の基準で評価することが困難」はどうでしょうか。なかなか、判断はしにくいところではあります(が、これは判断できなくても大丈夫)、全社共通の判断を事業単位で評価するというのは難しい話だということを言っています。海外部門と国内部門で全然評価方法は違うのとまったく同じ話です。と、ここまでは合っています。
しかし、後半の「トップマネジメントの調整負担が職能部門別組織に比べて大きくなる」明らかに間違っていますね。事業部制組織は事業部へある程度権限を委譲することによって、調整を事業単位で行うことにより、そのような負担を軽減しているのでした。逆に、職能部門別組織の場合、事業ごとに人のやりくりなどの調整が難しくなります。よって、誤りです。
2.職能部門別組織は、範囲の経済の追求に適している。
まずここで「範囲の経済」、「規模の経済」を学習しましょう。似たようなようごなので、どっちがどっちだか分からなくなることが多いです。僕もそうです。こつとしては、言葉とイメージをつなげることです。
経営学用語の一つ。企業が生産量を増加させたり事業を多角化した場合には、一製品や一事業あたりのコストを削減できるという概念。これは複数の製品を複数の企業で生産するよりも、複数の製品を一つの企業で生産した方がコストを削減できるようになるということから言われている。このことでコスト削減ができるようになるのは、複数の事業で同じ設備が共用できたり、コストをかける場合にでも複数の事業が存在したならば、複数の事業の分だけ必要となるような重複するコストを削減できるようになるためである。
「地域政策に適用すると「都市の規模に関係なく、特色を持った地域が交流・連携することによって、情報や知識を出し合い新たな価値を生み出すことができる」と言い換えることができる。」
「範囲の経済」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年9月7日 (火) 13:57 UTC、URL: 範囲の経済 - Wikipedia
「範囲」と言う言葉と、多角化のイメージを持つように覚えましょう。もちろん、まったくもって、生産する設備が共通化できない事業間では成り立たないこともありますが、多角化して複数の製品を生産するときに、共通で生産可能なものは統合して作った方がもちろん生産コストをおさえることができます。このように、多角化することにより、生産コストをおさえ、有利にすすめることができます。このことを、範囲の経済と呼びます。
生産関数の各生産要素をすべて一定割合で変化させた場合の生産量の変化を指す。狭義には、以下で述べる規模に関して収穫逓増を指す。
簡単化のため生産関数Y は労働L と資本K の2変数にのみ依存すると仮定し、Y =F (L , K ) と記述する。このとき、生産関数は生産の規模をλ倍させたときの生産量F (λL , λK ) ともとの生産量Y のλ倍との大小関係によって
- 規模に関して収穫逓増: が成立する場合
- 規模に関して収穫一定: が成立する場合。すなわち生産関数が労働と資本の1次同次関数で表せる。
- 規模に関して収穫逓減: が成立する場合
の3種類に分類される。
理論的な分析では、議論の複雑化を避けるために、規模に関して収穫一定を想定する場合が多い。一般的には、生産関数はある一定水準までは規模に関して収穫逓増であるが、それ以降は収穫逓減であると考えられている。
「規模の経済」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年9月18日 (土) 14:16 UTC、URL: 規模の経済 - Wikipedia
どういうこと言っているかさっぱり分からねぇと思った方、普通です。よく分からないです。さて、生産する場合、どうしてもかかってしまう固定費が存在するということを我々はすでに学んでいます。その固定費の中においては、基本的にたくさん生産しても固定費は一定です。そのため、基本的にはたくさん作れば作るほど、単位当たりのコストが安くなりますよっていうことを、規模の経済と言います。ただ、それにも限界があって、さらにそれを超えるとかえってコストが高くなっていってしまうというのも覚えておきましょう。
実はすでに、マトリクス組織のところで、範囲の経済に有利と言ってしまっているので、これが誤りということは明白なのですが、ちゃんと考えてみましょう。範囲の経済とは、上記でも言ったように多角化した企業において、リソースをうまいこと使いまわそうという話でした。職能部門別組織は、機能ごとに体系化された組織であることから、事業ごとのリソースアサインの調整が不得意で、オーバーヘッドがかかりやすいです。マトリクス組織の場合、職能部門別組織の中にさらに事業部ごとにリソースやりくりすることを前提としているため、リソースのやり繰りがやり易く、範囲の経済を追求しやすい組織と言えます。よって、選択肢は誤りです。
3.トップマネジメント層の下に、生産、販売などの部門を配置する組織形態が職能部門別組織であり、各職能部門はプロフィットセンターとして管理される必要がある。
さて、プロフィットセンターってなんでしょう。 ざっくりと言うと、会社にとって利益を生み出す部署です。対義語としてコストセンターと呼び、例えば研究関連部署とか、人事部とかが代表例ですね。さて、職能部門別組織は、当然開発、人事などで組織化される形態ですので、利益を上げるばかりの組織形態ではありませんね。よって、選択肢は誤りです。これは事業部制組織の説明になります。
4.マトリックス組織では、部下が複数の上司の指示を仰ぐため、機能マネジャーと事業マネジャーの権限は重複させておかなければならない。
さて、マトリックス組織の特徴で、上長が複数いて板挟みに合うことがあるという説明をしてしまったので、逆に選びにくくしてしまったかもしれませんが、これは誤りです。そのようなことにならないために、「重複してはいけない」ということですね。
5.命令の一元化の原則を貫徹する組織形態がライン組織であり、責任と権限が包括的に行使される。
ライン組織も、組織形態を表す用語ですが、他の3つの組織形態よりは、より根底的な組織形態を表す用語ですので、別扱いで扱われる用語です。ここまで誤りしかないので、これが正解なわけで、書かれた通りです。
まず一番は、「命令の一元化」、直系的な組織体系であり、自分の上司は唯一であり、指示は上から下へのみ流れる体制になります。自分への指示は直接的上司からのみおりてくるので、直接的上司はその部下に対して、すべての責任と権限を包括的に持っています。というわけで、正しいです。
以上より、正解は5になります。