令和 4 年度 第 1 次試験問題 財務・会計 第十五問 解答と解説

解答

 

3.

 

解説

 

 計算問題が続きます。今回は分散投資標準偏差にちなむ問題です。この問題は、覚えておけば簡単なのでぜひとも得点源にしておきたい問題ではあります。

 表を見ると、「期待収益率」「標準偏差」というキーワードが出てきます。これが分散投資においてどのような意味を持つのかまずは学びましょう。

まず期待収益率です。これは想像つきやすいでしょう。つまりは、リターンです。期待できる平均リターンが、期待収益率となります。100万かけて期待収益率が3%ってことは、3万円のリターンが期待できるってことですね。

つぎに標準偏差です。まず、一般的な意味として標準偏差Wikiで調べましょう。

標準偏差 (standard deviation, SD)

データや確率変数の、平均値からの散らばり具合(ばらつき)を表す指標の一つである。偏差ベクトルと、値が標準偏差のみであるベクトルは、ユークリッドノルムが等しくなる。

標準偏差を2乗したのが分散であり、従って、標準偏差は分散の非負の平方根である標準偏差が 0 であることは、データの値が全て等しいことと同値である。母集団や確率変数の標準偏差を σ で、標本標準偏差を s で表すことがある。二乗平均平方根 (RMS) を用いると、標準偏差は偏差の二乗平均平方根に等しくなる。

「直接原価計算」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年8月31日 (水) 06:50 UTCURL:    標準偏差 - Wikipedia

 

数学の時間ではないし、中小企業診断士資格においては、標準偏差を極める必要はないですが、意味合いはしっかりおさえましょう。散らばり具合を表す指標です。つまり、どれくらい散らばっているのかということです。

では投資の中での標準偏差とは何でしょうか?これはリスクを数値化したものと考えてください。投資は最悪の場合元本割れしてマイナスを出すことだって十分あり得ます。リターンが大きいほど、マイナスになる可能性も高いことが多いでしょう。

期待収益率が高く、標準偏差も高い(つまりリスクが高い)投資だけを行った場合、マイナスになった場合、とんでもなく大損になります。しかし、期待収益率はほとんど少ないが、確実性がある標準偏差が低い投資だけ行うと、今度は収益がなかなかでません。これらのバランスを見て、投資家はリスク分散しながら投資を行っていくわけです。

 問題文の表を見てみましょう。証券Zは、期待収益率が高いですが、その分標準偏差も高いです。いってみればハイリスクハイリターンな証券ということになります。逆に、証券Yは期待収益率は低いですが、標準偏差はZの半分です。ローリスクローリターンということですね。

 この問題では、YとZに等額ずつ投資を行うということです。その場合、複合された標準偏差はどうなるか?というのが問題のようですね。ちなみに表の下に、ルートの値が出ているが、それがそのまま解答の選択肢になっています。つまり、このどれかが正解ってことですね。

標準偏差はばらつきであり、投資においてリスクを表すものといいました。高い数値であればあるほど、期待収益率を得る確率は下がるということです。YとZを50%ずつ買うことで、リスク分散しましょうというのが、この事例の意図です。

このように2つの標準偏差が出ている事象を、複合して複合後の標準偏差を求める場合、必要なのは、その事象の配分(今回では、50%ずつ買うということなので1対1ですね。)、そしてそれぞれの標準偏差、そして共分散になります。

最後に共分散という初めての単語が出てきましたが、これは二つの事象の相関関係度合いを表すものです。例えばXがリスク高まったときは、Yもリスク高まるんだよねってときは、掛け合わしても、全然リスク分散にならないですよね。そのようなリスクの相関関係度合いを加味する必要があります。

しかし、今回、このような相関関係はゼロということで、この問題では共分散の話は置いておきます。

では、今回は純粋に2つの事象の標準偏差とその配分で、複合した標準偏差を算出してみましょう。以下のように求められます。

√((Yの標準偏差 x Yの配分割合)^2 + (Zの標準偏差 x Zの配分割合)-2)

覚えにくいって思われるかもしれません。理系の人は逆に覚えやすい形式な気もします。今回のケースを当てはめてみましょう。

Yの標準偏差:10  Yの配分割合:50% = 0.5

Zの標準偏差:20  Zの配分割合:50% = 0.5

 

√((10 x 0.5)^2 + (20 x 0.5)^2)

= √(25 + 100) = √(125)

そして、√(125)の値はすでに問題に出ており、11.2でした。

よって、解答は3です。