令和 4 年度 第 1 次試験問題 財務・会計 第五問 解答と解説

解答

 

3. 

 

解説

無形固定資産に関する問題です。無形固定資産については、様々な形で問われる用語です。しっかりと意味を覚えておくことと、その周辺の知識も合わせて覚えていくのが良いです。

まずそもそもで「固定資産」とは何でしょうか?

固定資産 (fixed assets、Noncurrent assets)

会計上の固定資産と、税法上の固定資産の2通りの意味がある。

会計上の固定資産

会計上の固定資産とは、販売目的でなくかつ継続的に会社で使用することを目的とする財産のことを指す。固定資産は流動資産(Current assets)と共に資産を構成する。 企業の営業活動を直接表している売掛金在庫などと、営業活動に直接の関連がなくとも短期的に現金として現れる預金利子などは流動資産であり、固定資産とは異なる扱いとなる。短期と長期の区別は、日本を含む国際的な会計の基準では1年を用いており、1年以内に現金化するものは流動資産とされる。

法人税法上の「固定資産」

法人税法上、「固定資産」は次のように定義されている。すなわち、「土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるもの」(法人税法第2条第22号)。所得税法上の「固定資産」も大枠において同様である(所得税法第2条第18号)。

「固定資産」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年7月11日 (月) 01:54 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BA%E5%AE%9A%E8%B3%87%E7%94%A3

 とりあえず、現時点では会計上の固定資産を抑えておけばOKだと思います。まず、販売目的でないこと。売り物は固定資産とはならないですね。そして、さらには継続的に会社で使用することを目的としている。一時的なものではなく、継続的に使うというのがポイントです。そして、固定資産に対して、流動資産というものがあります。流動資産は書かれている通り、短期的に現金として現れる預金利子などが、流動資産にあたります。なお、短期とは、1年以内に現金化するものという基準があります。

さて、ここまでで、固定資産というものは理解できました。そして無形とは何でしょうか?そしてきっと無形があるなら、有形もあるのだと推測できます。まあ、言葉の通りです。物理的な形態を成しているか成していないかの違いです。

物理的な形態を成していないとは、最も代表的な無形固定資産は、ソフトウェアです。ソフトウェアは、プログラムという物理的なものではないが、確かに資産として存在するものです。これが代表的な無形固定資産です。そして特許権なんかも忘れてはいけんません。物理的なものではないですが、資産にカウントされます。その他は、Wikiで確認しておきましょう。

固定資産について、忘れてはいけないものが減価償却です。固定資産といっても、使えば使うほど、古くなったり、または有効期限があったりするなど、価値が衰えていってしまいます。そのため、固定資産は耐用年数が設定されます。また、さらに使用後に販売した場合の残存価格が設定され、資産から残存価格を差し引いた金額を、耐用年数で割った金額を毎年、償却していきます。

さて、ここまでが、概要知識ですが、問題にはもっと細かい、例外的な話が出てくるものです。これらは、やっぱり問題を通してひとつひとつ覚えていくのが、効率良いと考えます。あんまり、長い長いテキストや、動画、ずっと眺めていても、覚えた気にだけなってしまうので。

では、問題を見ていきましょう。

 

1.受注制作のソフトウェアについても償却を行う。

昨今だと、サブスクリプション的なビジネスモデルも増えて、多くの例外的な話がでてきています。中小企業診断士試験は、時々、時事ネタをぶっこんでくるので、油断はできませんが、まずは代表的な例外をおさえていきましょう。ソフトウェアに関しては、その使用目的により、減価償却するかどうかが変わってきます。

使用目的とは大きくは3つあります。

  • 自社利用を目的としたソフトウェア
  • 市場販売を目的としたソフトウェア
  • 販売目的で受注制作したソフトウェア 

一つ目の、「自社利用を目的としたソフトウェア」は最も簡単で、会計ソフトや、イラスト系ソフトウェアなど、自社で利用するようなソフトウェアのことです。全部を全部、自社で利用すれば資産になるかというとそうでもなく、無形固定資産として減価償却がされるものは、収益が見込める、または費用削減が見込めるものに限ります。

 

二つ目です。市場販売を目的としたソフトウェアの場合、これはソフトウェア開発に携わっている人であれば、何となく知っているかもしれません。販売前の完成品を、製品マスターと呼びますが、これができるまでの開発費用は、研究開発費として費用として処理されます。その後、マスターができてからの支出について、固定資産扱いで処理がされ、減価償却の対象となります。

 

さて、今回問題となっている三つ目はどうでしょうか。受注制作というのがポイントですね。ある特定の顧客から注文を受けて、ソフトウェアを制作する場合、これを固定資産として扱うことはできません。請負工事の会計処理が適用されます。よって、減価償却は行われません。

 

2.人的資産は無形固定資産に含まれる。

人的資産、言ってみれば従業員です。従業員に減価償却を行うかというと、そんなことありませんね。給料などは、費用で処理されますので、無形固定資産には含まれません。 

 

3.のれんは減損処理の対象となる。

のれんという、また新しい用語が出てきてしまいました。のれんといっても、飲食店にかかっているようなのれんではありません。Wikiにも書いていますが、のれん自体には意味はないのですが、いわばブランドの価値、プレミア分の象徴という意味で、会計での、「のれん」は使われます。では具体的にどのようなときに使われるでしょうか?Wiki を見てみましょう。

のれん (goodwill)

企業買収・合併 (M&A) の際に発生する、「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」の差額のことである。連結会計では、投資価額と被投資企業時価評価純資産のうち持分相当の差額を指す。

「のれん」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年7月1日 (金) 01:09 UTC

URL:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%82%8C%E3%82%93_(%E4%BC%9A%E8%A8%88)

 

つまり企業買収の際に、実際の買収価格と、時価評価純資産に差額のことを「のれん」というわけですね。おそらく、時価評価純資産よりも低い価格で、企業買収に応じることもあまりないと思います。しかし、将来の価値を考えて、時価評価純資産よりも高く買収することはあるでしょう。この際のプレミア価格が、「のれん」というわけで、この差額は特別の会計処理をしてあげる必要があります。

さて、問題にもどりましょう。のれんは減損処理の対象となるかですが、これは、理由はとにかく覚えておくしかない事項です。のれんは、無形固定資産の区分に表示されます。そして、日本においては、規則的な償却を行うことが規則とされています。しかし、今回の問題は償却ではなく、減損処理です。減損処理とは「のれん」の価値が損なわれた場合にその分、資産の価値を減損させることである。この処置は日本においても認められている。ちなみに、海外ではこちらのみが実施される。

よって、3は正しく、これが正解です。

 

4.無形固定資産の償却には定額法と定率法がある。

減価償却の方法には、いくつかの種類があります。しかし、定額法と定率法をまずは覚えておけば良いです。ここではざっくりと、説明すると、有形肯定資産では定額法、定率法があり、無形固定資産では定額法が決まりとなっています。よって、これは誤りです。

以上より、正解は3です。