令和 4 年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第十八問 解答と解説

解答

 

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解説

絶対優位」、「比較優位」、「機会費用」といった重要用語が出てきています。が、この辺は、割とこれまでの話よりは考えやすい分野ではないでしょうか。まずはそれぞれの言葉をおさらいしておきましょう。

 

絶対優位 (absolute advantage)

もしある国Aが他国Bに比べて効率的に(小さいコストで)財 x を生産できるのであれば、ある国Aは財 x の生産に関して絶対優位(ぜったいゆうい、absolute advantage)を持っていると言う

絶対優位はアダム・スミスによって発見された概念であり、国際貿易において、各国が他国に比べて絶対優位にある分野(生産に必要な投下労働量が他国に比べて小さい)に集中して生産し、その生産された財の一部をお互いに交換(貿易)することで、貿易を行った国それぞれが利益を得ることができるとされる

「絶対優位」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年3月3日 (水) 07:33 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E8%B2%A1

 

ポイントなのが、小さいコストでということですね。いわば、その国のある財に対する生産能力であり、その絶対的な生産性について優位性を持っているということです。アダム・スミスさんの名前も覚えておいた方が良いかもしれません。

では比較優位とはどうでしょう?

比較優位 (comparative advantage)

比較優位(ひかくゆうい、comparative advantage)とは、経済学者であったデヴィッド・リカードが提唱した概念で、比較生産費説リカード理論と呼ばれる学説・理論の柱となる、貿易理論における最も基本的な概念である。アダム・スミスが提唱した絶対優位(absolute advantage)の概念を柱とする学説・理論を修正する形で提唱された。

これは、自由貿易において各経済主体が(複数あり得る自身の優位分野の中から)自身の最も優位な分野(より機会費用の少ない、自身の利益・収益性を最大化できる生産)に特化・集中することで、それぞれの労働生産性が増大され、互いにより高品質の財やサービスと高い利益・収益を享受・獲得できるようになることを説明する概念である。

アダム・スミスの絶対優位は、各分野における経済主体間の単純な優劣を表現するに留まるため、自由貿易と分業の利点や実態が限定的にしか表現できていないのに対し、リカードの比較優位は、各経済主体内において複数あり得る優位分野間の時間的な収益性・効率性の比較とその選択・集中にまで踏み込むため、より精度の高い自由貿易・分業の説明・擁護に成功している。

  • 比較優位における労働生産性とは一人当たりの実質付加価値高を意味する。
  • 比較優位の解説に際しては、国家による統制を核としている重商主義に対する批判から始まった歴史的な経緯もあって、国家間の貿易がよく引き合いにされるが、地方公共団体及び企業や個人などのあらゆる経済主体においても同様である。

「比較優位」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年8月7日 (日) 23:38 UTCURL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E8%B2%A1

 デヴィッド・リカードさんが提唱したもので、面白いのが、最初は絶対優位の対義語くらいに思っていたら、位置づけとしては絶対優位を修正するものとして提唱されているんですね。

意味合いとしては、単純に生産性の絶対値を見るだけではなく、生産の集中、分業や時間的な考慮などを考慮したうえでの優位性を加味した論説ということでしょうか。

最後は機械費用です。

機械費用 (oppotunity cost)

時間の使用・消費の有益性・効率性にまつわる経済学上の概念であり、ある経済行為を選択することによって失われる,他の経済活動の機会のうちの最大収益をさす経済学上の概念。最大利益を生む選択肢以外を選択する場合、その本来あり得た利益差の分を取り損ねていることになるので、その潜在的な損失分を他の選択肢を選ぶ上での費用(cost)と表現している。

会計学上では、ある意思決定をしたために行えなかった投資機会のうち、得ることができなかった最大の利益額のことである

機会費用」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年6月13日 (月) 23:02 UTCURL: 

ja.wikipedia.org

 

 機械費用とは、様々に行われる意思決定の結果によって、失われてしまった理論上の最大収益を指します。

 

では、問題に入ってみましょう。

 

まずは、機会費用について考えてみましょう。機会費用を考える場合、まずは1個あたりにかかる時間を考えてみましょう。以下のようになるはずです。

 

  おにぎり サンドイッチ
Aさん 3分/1個 5分/1個
Bさん 5分/1個 15分/1個

 

Aさんはおにぎりを1個作るのに3分かかります。サンドイッチは5分かかるので、おにぎりを1個作る間に、サンドイッチ3/5個作ることができます。

このとき、Aさんがおにぎりを1個作ることの機会費用はサンドイッチ3/5個と言うことができます。ということは、逆にサンドイッチ1個作ることの機会費用は、おにぎり5/3個ということになりますね。

Bさんの場合どうでしょう。同じように考えて、おにぎり1個作ることの機会費用は、サンドイッチ1/3個ということになりますね。逆にサンドイッチ1個作ることの機会費用は、おにぎり3個ということになります。

 

次に絶対優位についてです。

絶対優位は単純な生産効率性です。それぞれおにぎり、サンドイッチを見ていきましょう。どちらも明らかに早くつくれるのは、Aさんです。このため、Aさんは両方について、絶対優位を持っていると言えます。

 

最後に比較優位についてです。

考え方としては、どちらかの生産物を1と考えたとき、もう一方の生産物をいくつつくる能力があるかを考えます。おにぎりを1個つくる労力で、サンドイッチをいくつ作れるかということですね。

Aさんは、おにぎりを1個作る間に、(3/5)個 = 0.6個サンドイッチを作ることができます。

Bさんは、おにぎりを1個作る間に、(1/3)個 = 0.3333個のサンドイッチを作ることができます。

つまり、Aさんの方が、サンドイッチに関して比較優位があると考えます。逆に、Bさんはおにぎりに比較優位があると考えることができます。

では、問題を見ましょう。

a Aさんにとって、おにぎりを 1 個作ることの機会費用は、サンドイッチ 3/5 個である。

➡ その通りですね。正しいです。

 

b Bさんにとって、おにぎりを 1 個作ることの機会費用は、サンドイッチ 3 個である。

➡ 違いますね。サンドイッチ1/3のはずです。誤りです。

 

c おにぎりとサンドイッチを作ることの両方に絶対優位を持っているのは、Bさんである。

➡ 違いますね。Aさんが両方に絶対優位を持っています。誤りです。

 

d サンドイッチを作ることに比較優位を持っているのは、Aさんである。

➡ その通りです。正しいです。

 

よって、解答は2です。