令和3年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第六問 解答と解説

解答

 

設問1:1.

設問2:2. 

 

解説

これも令和4年度の7問目あたりかな。IS-LM分析についてです。

令和 4 年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第七問 解答と解説 - Nのビジネスブログ (hatenablog.com)

まず、利子弾力性という言葉が出てきています。これは、利子が1%動いたときの貨幣需要が何パーセント動くかということです。

利子率が下がれば、どんどんお金を借りて、投資を進めようとしていくので貨幣が必要になっていきます。しかし、利子率が上がればその逆に、借りるのをやめて、投資を控えていくものです。

 

設問 1

 

さて、LM(貨幣需要)曲線が、垂直ってどういうことでしょうか?ちなみに、LM曲線は貨幣需要というだけあり、貨幣の需要と、利子率とGDP(所得)の組み合わせを表した線です。IS曲線は、投資と貯蓄が等しくなるような、GDP(所得)と利子率の組み合わせになります。

横軸(GDP)に対して垂直ということは、貨幣需要が利子率に依存しないことを表しますね。つまりは、利子弾力性がゼロということです。利子がどれだけ増えようと、減ろうとも、貨幣需要は全く変化しないことを表します。

 

正解は1です。

設問 2

 

a 政府支出を増加させると、完全なクラウディング・アウトが発生する。

 クラウディング・アウトは初めてな用語ですね。確認しておきましょう。

  クラウディングアウトcrowding out)とは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されること。「クラウディングアウト」(crowding out)の字義は「押し出す」という意味。

 

一般には、クラウディングアウト効果として使われる。典型は失業対策などのために国債を発行して公共事業福祉政策を拡充させようとする際、大量に発行した新発国債が意図せず市中金利を高騰させ、民間の経済活動(投資のための資金調達や住宅購入などの消費行動)に抑制的な影響を与えてしまう場合である。

概要

古典派の議論

クラウディングアウトのアイデアは古くから存在し、アダム・スミスは政府による経済活動はすべて不生産的労働であり、政府が公衆から資金を借入れて消費することはその国の資本の破壊であり、さもなければ生産的労働の維持に向けられたであろう生産物を不生産的労働に向けるものである、とした。一般に完全雇用を前提とした古典派経済学においては、政府支出の増大はそれが租税で調達されようと国債で調達されようと、民間支出はクラウド・アウトされる。

世界恐慌の発生した1929年頃、アメリカおよびイギリスでさかんに論議され、アメリカでは共和党フーバー政権が赤字財政と国債発行に反対し、均衡予算主義のためにクラウディングアウトの議論を援用した。また、イギリスでは保守党政権下の財務省が同様の理論でJ.M.ケインズの立案になる自由党の提案と対立した[3]

クラウディングアウトの問題は行政府による経済・財政政策において基本的な論題であり、もし古典派の言うように常に完全なクラウディングアウトが発生するのならば、行政府による経済への直接介入(経済政策)は意味をなさないこと(無効)になる。

ケインズの見解

ケインズのこの問題についての基本的見解は、失業と遊休資本が存在しているかぎりは、財政支出を増大してもクラウディングアウトによる完全な相殺は発生しない、というものである。ただし、政府による資金調達や財調達にともない、通貨当局がマネーサプライを拡大しなければ、利子率の上昇をもたらし投資を抑制する可能性があるとする[4]。また、恒常的な財政支出が、民間の期待や予測を通じて物価資本の限界効率(期待収益率)、流動性選好に影響をあたえ、民間投資需要と競合する可能性を指摘する

ケインズ以降、経済の活動水準に影響を与えるのが金融政策であるか、財政政策であるかによって論争が起こった。マネタリストは金融政策に肯定的で財政政策(とりわけ裁量的な財政政策)には否定的であり、ニュー・ケインジアンは金融政策を重視するものの、財政政策の有効性にも肯定的なことが多い。また、マンデルフレミングモデルが示すように、閉鎖経済か開放経済かで財政政策と金融政策のどちらが有効性が高いかが変わってくるという見方が主流である。

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クラウディング・アウト」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。

ja.wikipedia.org

 

めちゃくちゃ重要で、その発生過程などできれば覚えておいた方がよいです。

ざっくりとした意味としては、利子率がどんどんあがっていくと、投資をしたくなっていきますね。そうなると今度はGDPがあがらなくなってしまいます。この流れをクラウディング・アウトといいます。

特に財政拡張政策時のクラウディング・アウトについてが、重要です。財政拡張政策を行うと、IS曲線は右側に移動して、GDPが一時的に上がります。貨幣需要は高まりますが、しかし貨幣需要の高まりから利子率が高まり、結局GDPの高まりは下がってしまいます。

さて、問題のように政府支出の増加は、まさにこの財政拡張政策に当てはまります。今回の場合、LM曲線が垂直なのでむしろ考えやすいかもしれません。以下のように、IS曲線が右に移動しても、一時的にはGDPを押し上げるかもしれませんが、利子率はLM曲線との交点に均衡していくため、GDPは元に戻ってしまいます。まさにクラウディング・アウトの発生ですね。よって、aは、正しいです。

 

b 政府支出を増加させると、利子率の上昇を通じた投資支出の減少が生じるが、GDP は増加する。

投資支出が減少していって、GDPが増加することはないですね。上記のグラフの通りです。これは誤りです。

 

c 貨幣供給を増加させると、利子率の低下を通じた投資支出の増加が生じるが、GDP は不変である。

貨幣供給を増加するということは、LM曲線を右にシフトするということです。この場合、市場に貨幣が増加して利子率は下がっていくはずですね。LM曲線が垂直の場合、以下のように推移し、利子率は低下し、GDPは高くなっているのがわかります。いわゆるこれが金融緩和政策というやつです。

cは、投資支出が増加は正しいですが、GDPが不変というのは誤りです。

d 貨幣供給を増加させると、利子率の低下を通じた投資支出の増加によって、GDP は増加する。

利子率の低下、投資支出の増加、そしてGDPの増加。

全てグラフの通りです。dは正しいです。

 

よって、aとdが正しいので、正解は2です。